ラファエル前派:ヴィクトリア朝ロンドンで結成された、美術界への若き反逆者たち
1848年、ミレイ、ロセッティ、ハントらがロンドンで結成したラファエル前派兄弟団。「ラファエロ以前」の誠実な自然描写への回帰を掲げ、「オフィーリア」などの傑作を生んだ英国美術史上最も有名な運動です。
はじめに:「ラファエロ以前に帰れ」と叫んだ若者たち
ラファエル前派(ラファエル前派兄弟団、P.R.B.)は、1848年にロンドンで結成された若手芸術家グループです。中心となったのは、ジョン・エヴァレット・ミレイ、ダンテ・ゲイブリエル・ロセッティ、ウィリアム・ホルマン・ハントら、いずれも20歳前後の青年たち。ルネサンスの巨匠ラファエロを理想と仰ぎ、その模倣を教え込む英国ロイヤル・アカデミーの型にはまった教育に反発し、「ラファエロ以前」の初期ルネサンス美術のような誠実で細密な自然描写に帰ろうと訴えました。
時代背景:産業革命下の英国と、変わりゆく社会
19世紀半ばの英国は、産業革命による繁栄の絶頂にありました。その一方で、都市の貧困や社会の矛盾も深刻化していました。ラファエル前派の画家たちは、文学や聖書、中世の伝説に題材を取りながら、細部まで妥協のない描写と鮮やかな色彩で、理想と現実のはざまを描きました。当初は酷評されましたが、美術評論家ジョン・ラスキンの擁護によって評価を確立していきます。
絶対に知っておきたい!3つのポイント
1. ミレイ「オフィーリア」——川に浮かぶ悲劇のヒロイン
シェイクスピア『ハムレット』の一場面を描いたこの絵は、ラファエル前派の代名詞です。川辺の植物の一本一本まで実物写生で描き込む執念は、彼らの理念そのものでした。
2. ロセッティと運命の女たち
ロセッティは、神秘的な雰囲気をまとった女性像を数多く描きました。モデルを務めたエリザベス・シダルやジェーン・モリスとの関係も含め、その芸術と人生は今も多くの物語を生んでいます。
3. ウィリアム・モリスへ、そしてデザインの世界へ
ラファエル前派に共鳴したウィリアム・モリスは、生活と芸術の統一を目指すアーツ・アンド・クラフツ運動を起こしました。この流れはやがて近代デザインの源流のひとつとなっていきます。
まとめ
ラファエル前派は、若者たちの反逆から始まり、英国美術に永遠の名作群を残しました。物語性豊かな絵画は、美術初心者にも入りやすい「絵の中の文学」です。
