具体美術とアンフォルメル:「人の真似をするな」、芦屋から世界へ発信された前衛
「今までにないものを作れ」を合言葉に、絵の具を足で塗り、キャンバスを体当たりで破った具体美術協会。関西の芦屋から生まれたこの前衛は、ヨーロッパのアンフォルメル運動と共鳴し、世界的評価を得た。
はじめに:既存の美術のルールを、身体ごとぶち破る
具体美術協会(グループ名は「具体」)は、1954年に関西の芦屋で結成された、日本の戦後前衛美術を代表するグループです。中心人物の吉原治良が掲げた「人の真似をするな。今までにないものを作れ」というスローガンのもと、メンバーたちは絵筆で丁寧に絵を描くという伝統的な美術のあり方そのものに反旗を翻しました。絵の具をキャンバスに叩きつけたり、体全体を使って紙や布を突き破ったりと、画家自身の身体的な行為(アクション)そのものを作品として提示する、実験的で開放的な表現を追求しました。
時代背景:ヨーロッパのアンフォルメルとの共鳴
具体の活動とほぼ同時期、ヨーロッパでもジャン・デュビュッフェらを中心に「アンフォルメル(非定型)」と呼ばれる、既存の美的形式を否定する前衛運動が展開されていました。1957年、フランスの美術評論家ミシェル・タピエが来日して具体のメンバーの作品に触れ、高く評価したことをきっかけに、具体は国際的なアンフォルメル運動の一翼として世界的な注目を集めるようになります。日本の関西という地方都市発の前衛運動が、リアルタイムで欧米の美術動向と共鳴し合ったという点で、具体は日本の現代美術史上、極めて重要な位置を占めています。
3つの見どころ
- 白髪一雄「フット・ペインティング」: 天井からロープでぶら下がり、床に置いた大きなキャンバスの上を裸足で滑りながら絵の具を塗り広げる、身体的で力強い制作方法。
- 田中敦子「電気服」: 無数の電球やネオン管を接続したドレスを着用し、実際に点灯させるパフォーマンス作品。テクノロジーと身体を融合させた、時代を先取りする表現です。
- 村上三郎「紙破り」: 大きな木枠に張った紙を、体当たりで突き破るパフォーマンス。一瞬の破壊の痕跡そのものを作品として提示する、具体を象徴する行為です。

