佐喜眞美術館:普天間基地の一角に、丸木夫妻の「沖縄戦の図」を刻む
一部返還された米軍普天間飛行場の用地に、1994年開館した私立美術館。画家・丸木位里、丸木俊夫妻が10年をかけて描いた「沖縄戦の図」を常設し、沖縄の記憶と平和への祈りを伝える。
はじめに:基地の跡地に建つ、鎮魂と平和の美術館
佐喜眞美術館は、沖縄県宜野湾市の米軍普天間飛行場に隣接する、一部返還された用地に1994年(平成6年)に開館した私立美術館です。館主の佐喜眞道夫が、自らの先祖伝来の土地の返還を粘り強く求め続けた末に実現したこの美術館は、画家・丸木位里、丸木俊夫妻が描いた大作「沖縄戦の図」を常設展示することで知られています。フェンスの向こうに広がる広大な滑走路と、その足元に建つ小さな美術館。この対比そのものが、訪れる人に沖縄の戦後史を静かに突きつけます。2024年には開館30周年を迎え、「静かにもの想う場」として歩みを重ねてきました。
時代背景:戦争の記憶を、絵画によって伝え続ける
丸木夫妻は、広島の原爆の惨禍を描いた連作「原爆の図」で知られる画家ですが、沖縄戦の実態を描くべく沖縄に通い、住民の証言を丹念に集めながら「沖縄戦の図」を完成させました。中心となる一作は1984年の制作で、大きさは縦400センチ、横850センチ。集団自決やガマ(自然壕)での惨劇など、住民を巻き込んだ地上戦の記憶が、土のような赤茶色と墨の線によって画面いっぱいに刻まれています。その後も夫妻は主題を描き継ぎ、「沖縄戦の図」は全14部におよぶ大きな仕事となりました。基地問題を抱える普天間の地に置かれることで、作品は展示のたびに新しい重さを帯び続けています。
3つの見どころ
丸木位里・俊「沖縄戦の図」:開館以来の常設展示として、いつ訪れても必ず出会える鎮魂の絵画です。画面に描き込まれた無数の人物は、逃げ惑う母子や兵士、うずくまる老人など一人ひとり表情が異なり、時間をかけて近づいて見るほど発見があります。
屋上から見渡す普天間基地:屋上に上がると、フェンスの向こうの米軍基地を実際に見渡すことができ、作品で見た戦争の記憶と、いまも続く現実の基地問題とが一続きのものとして迫ってきます。屋上へ向かう階段が6段と23段に分けられているのは、沖縄戦の組織的な戦闘が終わったとされる6月23日「慰霊の日」にちなむものです。
建築家・真喜志好一の設計:沖縄の伝統的な墓の形状「亀甲墓」を思わせるゆるやかな曲線の外観が特徴で、館内はスロープを備えたバリアフリー構造。常設展のほかに企画展も開催され、戦争や人間の尊厳を見つめた国内外の作品が紹介されます。
施設情報・アクセス
住所:〒901-2204 沖縄県宜野湾市上原358
アクセス:那覇空港より車で約30分
開館時間:9:30~17:00
休館日:火曜日、旧盆、年末年始
入館料:大人900円、大学生および70歳以上800円、中高生700円、小学生300円(いずれも団体割引あり)