東郷青児:なめらかな曲線と淡いカラー、昭和モダンと美人画で大衆を魅了したロマンの絵師

東郷青児:なめらかな曲線と淡いカラー、昭和モダンと美人画で大衆を魅了したロマンの絵師

画家

独特のすべすべとしたなめらかな質感と、淡いパステル調のカラーで描かれたモダンな女性たち。二科会のドンとして日本の前衛洋画を牽引しながら、数々の喫茶店や包装紙、ポスターでお茶の間を彩った巨匠の一生。

はじめに:昭和の街並みとお茶の間を彩った、モダン&エレガンスの代名詞

東郷青児(1897-1978)は、昭和時代に最も広く大衆に愛された洋画家の一人です。彼の描く、なめらかな輪郭線と、淡いグレーやピンクを基調としたパステルカラーの女性像は、甘美で、哀愁があり、かつ都会的なエスプリ(知性)に満ちています。彼の絵は美術館の中に留まらず、老舗喫茶店(京都のソワレなど)のグラスや内装、洋菓子店(タカセなど)の包装紙、劇場のポスターなど、昭和の日本の「生活の中のデザイン」として溶け込んでいました。

生涯:パリでの未来派・シュルレアリスムとの遭遇、そして二科会の盟主へ

鹿児島に生まれた東郷は、若い頃からアバンギャルドな感性を発揮し、山田耕筰らの支援を受けてフランスへ留学。パリで最先端の「未来派」の運動に参加し、ピカソとも交流しました。帰国後、日本の前衛画家集団である「二科会」のリーダーとして活躍。激しいアヴァンギャルド絵画から出発しながらも、徐々に「だれが見ても美しく、親しみやすい、究極にモダンでエレガントな美人画」へと画風を集約させていきました。晩年まで二科会のボスとして日本の美術界に君臨し、新宿にみずからの名を冠した東郷青児美術館(現在のSOMPO美術館)が設立されました。

3つの代表作解説

  • 望郷(SOMPO美術館蔵): 東郷青児の代表作。風になびく長い髪を持つ、彫刻のように滑らかで美しい女性の半身像。淡いブルーとグレーのグラデーションが、都会的で知的な哀愁を漂わせています。
  • 超現実主義の散歩(二科展出品): 東郷の初期の前衛的な傑作。キュビスムやシュルレアリスムの影響を色濃く反映し、幾何学的に分解された都市と人間の歩みを、モダンな装飾としてまとめた名作。
  • 喫茶ソワレの装飾とグラス画: 京都の有名な喫茶店「ソワレ」に寄贈された、東郷の女性画の数々。ブルーの神秘的な照明のなかに、東郷の描く女性の絵やコースターが完璧に溶け合い、空間全体を一つのロマンアートにしています。