『奇想の系譜』:若冲ブームの原点となった、日本美術史を塗り替えた伝説の名著
美術史家・辻惟雄が1970年に世に問うた『奇想の系譜』。岩佐又兵衛、狩野山雪、伊藤若冲、曽我蕭白、長沢芦雪、歌川国芳という「奇想の画家」たちを再評価し、今日の若冲ブームの源流となった一冊です。
はじめに:「傍流」とされた画家たちを、歴史の主役に引き上げた本
『奇想の系譜』は、美術史家・辻惟雄(つじ・のぶお)が1970年に刊行した日本美術史の名著です。当時の美術史では傍流・異端と見なされていた岩佐又兵衛、狩野山雪、伊藤若冲、曽我蕭白、長沢芦雪、歌川国芳の6人を「奇想の画家」として取り上げ、その豊かな想像力(イマジネーション)こそ日本美術の本流に流れる創造性だと論じました。この本がなければ、今日の伊藤若冲の大ブームはなかったと言われるほど、後世に決定的な影響を与えた一冊です。
この本の3つの見どころ(読みどころ)
1. 「エキセントリック」の再発見
若冲の超細密な動植物画、蕭白の常軌を逸した水墨画、国芳の奇抜な戯画——。整った美しさではなく、見る者を驚かせ、ぎょっとさせる表現の中にこそ日本美術の活力があるという視点は、刊行から半世紀を経た今も新鮮です。
2. 美術史そのものを動かした影響力
本書で紹介された画家たちは、その後の展覧会ブームで次々と「再発見」されました。2019年には本書を元にした展覧会「奇想の系譜展」が東京都美術館で開催され、大きな話題を呼びました。一冊の本が美術史の景色を変えた、稀有な実例です。
3. 学術書なのに、読み物として面白い
専門的な内容でありながら、画家たちの逸話や作品描写は物語のように生き生きとしています。文庫版も出ており、美術ファンの必読書として読み継がれています。
この本を読んだ後の、おすすめのアクション
「奇想の画家」の実物に会いに行く: 若冲や蕭白、芦雪の作品は、国内の美術館の日本美術コレクション展や特別展でたびたび公開されます。本書で予習してから実物の前に立つと、その「奇想」の迫力が何倍にも増して感じられるはずです。
まとめ
『奇想の系譜』は、教科書的な日本美術のイメージを痛快にひっくり返してくれる一冊です。若冲や国芳が好きな人はもちろん、「日本美術はおとなしくて退屈」と思っている人にこそ読んでほしい名著です。
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