『リーチ先生』:民藝運動を支えた英国人陶芸家バーナード・リーチの生涯を描く感動作
原田マハの長編小説『リーチ先生』は、日本と英国を往復しながら「東と西の美の融合」を追い求めた陶芸家バーナード・リーチの物語。柳宗悦や濱田庄司ら民藝運動の同志たちとの交流も描かれる、新田次郎文学賞受賞作です。
はじめに:「東と西の結婚」を夢見た、ひとりの英国人
『リーチ先生』は、原田マハによる長編小説です(2016年刊行、第36回新田次郎文学賞受賞)。主人公は、明治末期に来日し、日本の陶芸に魅せられた実在の英国人陶芸家バーナード・リーチ。彼に弟子として仕えた架空の日本人青年・沖亀乃介の目を通して、リーチの芸術と人生、そして日本の仲間たちとの熱い交流が描かれます。
この本の3つの見どころ(読みどころ)
1. 民藝運動の巨人たちが続々登場
リーチの周りには、思想家の柳宗悦、陶芸家の濱田庄司や富本憲吉ら、のちに民藝運動を担う面々が集います。「名もなき職人の仕事にこそ美が宿る」という民藝の思想が生まれていく現場を、小説として追体験できます。
2. 日本と英国、二つの故郷の物語
リーチは後に濱田庄司とともに英国コーンウォールのセント・アイヴスへ渡り、東洋式の登り窯を築いて工房を開きます。日本で学んだ技と心を英国の土に根づかせようとする姿は、国境を越えた文化交流の物語として深い感動を呼びます。
3. 「作ること」の喜びに満ちた描写
轆轤(ろくろ)を挽き、釉薬を掛け、窯の火を見守る——。陶芸という営みの手触りが生き生きと描かれ、読んでいると土に触れたくなってきます。
この本を読んだ後の、おすすめのアクション
民藝の美に触れに行く: 東京・駒場の日本民藝館には、リーチや濱田庄司の作品が収蔵されています。小説の余韻とともに、実物の器の温かみを確かめてみてください。
まとめ
『リーチ先生』は、芸術に国境はないことを教えてくれる、心温まる長編です。民藝運動への最良の入り口としてもおすすめの一冊です。
著者・原田マハについて
原田マハは、ニューヨーク近代美術館(MoMA)勤務経験を持つ元キュレーターという異色の経歴の小説家です。美術の現場を知り尽くしているからこそ書ける臨場感あふれるアート小説で、日本に「アート小説」というジャンルを定着させました。『リーチ先生』のほかにも、ルソーを題材にした『楽園のカンヴァス』、ピカソの「ゲルニカ」をめぐる『暗幕のゲルニカ』、ゴッホと日本人画商を描いた『たゆたえども沈まず』など、実在の画家を主人公にした作品を数多く発表しています。
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本作の背景となった思想運動については民藝運動の記事で詳しく解説しています。柳宗悦らに見出され「世界のムナカタ」となった棟方志功の物語も、民藝の世界とつながっています。同じ著者のアート小説は『暗幕のゲルニカ』と『たゆたえども沈まず』の記事でどうぞ。
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