『暗幕のゲルニカ』:ピカソの「ゲルニカ」に託された、戦争と芸術をめぐるサスペンス
原田マハによるアート小説『暗幕のゲルニカ』。ピカソが「ゲルニカ」を描いた1930年代と、9.11後のニューヨークを行き来しながら、「芸術は世界を救えるのか」という問いに迫る傑作長編です。
はじめに:一枚の絵に、戦争への怒りのすべてを込めて
『暗幕のゲルニカ』は、キュレーター出身の作家・原田マハによる長編アート小説です(2016年刊行)。題材となるのは、パブロ・ピカソが1937年、ナチス・ドイツによるスペインの小都市ゲルニカ無差別爆撃への怒りを込めて描いた大作「ゲルニカ」。この絵の誕生をめぐる1930年代のパリと、9.11同時多発テロ後のニューヨークという2つの時代が交互に描かれ、やがて一つの物語へ収束していきます。
この本の3つの見どころ(読みどころ)
1. 「ゲルニカ」誕生の現場に立ち会う臨場感
過去パートの語り手は、ピカソの恋人で写真家のドラ・マール。彼女の目を通して、爆撃の報せに震え、巨大なカンヴァスに挑むピカソの姿が生々しく描かれます。制作過程を記録した実際の写真群を彼女が撮影していたという史実が、物語に厚みを与えています。
2. 9.11後の世界で問われる「芸術の力」
現代パートの主人公は、ニューヨーク近代美術館(MoMA)のキュレーター・八神瑤子。国連にあった「ゲルニカ」のタペストリーに暗幕がかけられたという実際の出来事を起点に、戦争へ向かう世界の中で芸術に何ができるのかが問われていきます。
3. 史実とフィクションの見事な織り合わせ
実在の人物と歴史的事実の隙間に大胆なフィクションを差し込む、原田マハの真骨頂が味わえます。読み終える頃には、「ゲルニカ」という絵が全く違って見えるはずです。
この本を読んだ後の、おすすめのアクション
「ゲルニカ」に関する資料や関連作品を見る: 実物はマドリードのソフィア王妃芸術センターが所蔵しています。いつか本物の前に立つことを目標に、まずは画集や映像で細部を確かめてみてください。
まとめ
『暗幕のゲルニカ』は、アート小説でありながら、戦争と平和をめぐる骨太な社会派サスペンスでもあります。「芸術は無力ではない」というメッセージが胸に残る一冊です。
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