『世界のビジネスエリートが身につける教養「西洋美術史」』:2500年の美術史を「教養」として身につける実用書

『世界のビジネスエリートが身につける教養「西洋美術史」』:2500年の美術史を「教養」として身につける実用書

美術史家・木村泰司が、ビジネスパーソン向けに西洋美術史をコンパクトに解説。約2500年の美術史とそれに連なる世界史を、実用的な教養として身につけるための入門書。

はじめに:西洋美術史は「グローバルな教養」である

海外の商談や会食の席で、美術の話題についていけずに気まずい思いをした。『世界のビジネスエリートが身につける教養「西洋美術史」』(木村泰司 著)は、そうした場面を想定して書かれた西洋美術史の入門書です。約2500年にわたる美術の歩みを、世界史の流れと結びつけながら解説していきます。

書誌情報:どんな本か

2017年10月、ダイヤモンド社から刊行されました。256ページで、新書ではなく単行本です。刊行後に版を重ねた人気書で、電子書籍版も出ています。電子版の配信日は紙の刊行とほぼ同時期ですが、書誌を引く際は2017年10月の刊行として扱ってください。

著者について

著者の木村泰司さんは西洋美術史家です。アメリカとイギリスで美術史を学び、帰国後は講演や執筆を通じて西洋美術史を一般向けに伝える仕事を続けてきました。「美術は見るものではなく、読むもの」という考え方を一貫して掲げており、作品を感性で味わうのではなく、描かれた時代の政治や宗教の文脈から読み解くという方法をとります。本書もその姿勢の延長にあり、感想や印象の話はほとんど出てきません。

内容の骨格:何がどの順で書かれているか

本書は「はじめに」で、なぜ欧米のエリート層にとって美術史が共通言語なのかを説明することから始まります。そのうえで本編は時代順に進み、古代ギリシャ・ローマの世界観、キリスト教が中心となる中世、ルネサンス、絶対王政とルイ14世に結びついたフランス古典主義、革命前夜のロココ、そして近代へと続きます。各時代の様式が、どのような政治体制・宗教・経済のもとで生まれたのかが必ずセットで語られるのが本書の型です。美術史の本というより、美術を軸に読み直した世界史の本と言ったほうが実態に近いかもしれません。

この本ならではの点

同種の西洋美術史入門は数多くありますが、本書は「なぜ知っておく必要があるのか」という動機づけから書き起こしている点が独特です。美術史の知識を趣味ではなく、社会階層や歴史観を共有するための道具として位置づけ、その前提を最初に読者と共有してから本編に入ります。この構えがあるため、教養書としては珍しく目的がはっきりしており、読み通す推進力が生まれます。

どんな読者に向くか

予備知識は不要です。むしろ世界史のほうに苦手意識がある人にこそ効きます。図版を眺めて楽しむタイプの本ではなく、文章を読んで理解するタイプの本なので、通勤時間などで少しずつ読み進める使い方に向いています。逆に、作品そのものを大きな図版でじっくり見たい方、個々の画家を掘り下げたい方には物足りません。また、扱いの中心は西洋美術であり、日本美術や現代アートは範囲に入っていません。まず西洋美術史の背骨を一本通したい、という段階の一冊です。

関連して見に行けるもの

本書で得た時代の文脈は、国内でも試せます。東京・上野の国立西洋美術館は、中世末期から20世紀初頭までの西洋絵画を常設展で通しで見られる数少ない美術館です。ルネサンス、バロック、ロココ、近代と歩いていくだけで、本書の章立てをそのまま辿ることになります。東京・丸の内の三菱一号館美術館は19世紀末のヨーロッパ美術に強く、大原美術館(岡山県倉敷市)やひろしま美術館(広島市中区)も西洋絵画のコレクションで知られています。海外出張の折に美術館を訪れる機会があれば、その国の歴史と結びつけて見ることで、名画鑑賞が地域史を読む体験に変わります。

まとめ

美術史を実務に使える教養として身につけたい人に向けた、実用的な入門書です。西洋美術史の大きな流れを効率よくつかみたいときの最初の1冊としておすすめします。

Kindle版:世界のビジネスエリートが身につける教養「西洋美術史」