ファン・ゴッホ《白い花瓶のバラ》:パリ時代の色彩実験
- 作者
- フィンセント・ファン・ゴッホ
- 制作年
- 1886年
- 所蔵
- 山形美術館(吉野石膏コレクション)
- 所在地
- 山形県山形市
吉野石膏コレクションの一点であるファン・ゴッホ《白い花瓶のバラ》は、1886年のパリ時代に描かれた油彩画。37×25.5センチの小さな画面に、明るい色彩をつかみ直そうとする画家の試みが凝縮されています。山形美術館での公開は2026年8月22日に終了しました。
吉野石膏コレクションの一点であるフィンセント・ファン・ゴッホの《白い花瓶のバラ》は、1886年、パリ時代に描かれた小さな静物画です。長く山形美術館に寄託されて公開されてきましたが、同館での公開は2026年8月22日で終了しました。ゴッホが色彩をつかみ直していく過程を伝える作品です。
《白い花瓶のバラ》とは
作者はオランダ生まれの画家フィンセント・ファン・ゴッホ(1853〜1890年)です。制作年は1886年、制作地はパリ、技法は油彩・カンヴァス、寸法は37×25.5センチ。展覧会の出品リストでは《静物、白い花瓶のバラ》とも表記されます。
1886年は、ゴッホがオランダからパリへ移り住んだ年です。それまでの彼は、農民や織工を主題に、褐色を基調とした重い色調の絵を描いていました。パリで印象派や新印象派の絵に触れ、明るい色を並置する描き方を知ったことが、その後の南仏時代の輝きにつながっていきます。
この転換期に、ゴッホは花の静物画を数多く手がけました。花は、モデル代をかけずに色の組み合わせを試せる格好の題材だったからです。白い花瓶に生けられたバラを描いた本作も、そうした色彩の実験の産物であり、37センチほどの小さな画面に、画家が何を確かめようとしていたのかが凝縮されています。
のちにアルルで描かれる《ひまわり》の連作を思い浮かべると、花はゴッホにとって特別な主題だったことがよくわかります。ただしパリ時代の花の絵は、アルルのような強い黄色一色の世界ではありません。赤や緑、白と灰色を隣り合わせに置き、どの組み合わせが画面を生き生きとさせるのかを、一枚ごとに確かめているような描き方です。本作もそうした試行の一枚として見ると、ずいぶん表情が変わってきます。
どこで見られる?
- 所蔵先 吉野石膏コレクション(吉野石膏美術振興財団)
- 所在地 公開先は未定
- 展示状況 山形美術館は「当館収蔵品としての吉野石膏コレクションの公開は、2026年8月22日(土)で終了しました」と告知しています。2026年度第3期(7月10日から8月22日)の「風景画と静物画」が、ピサロ、シスレー、モネ、ルノワールらとともに並んだ最後のテーマ展でした。作品は2026年度中に寄託元へ返却される予定で、次にどこで公開されるかは公表されていません。
- 山形美術館 服部コレクション(20世紀フランス絵画)、長谷川コレクション(江戸・明治の日本美術)、新海竹太郎・竹蔵の彫刻は引き続き公開されています。10時から17時(入館は16時30分まで)、月曜日と年末年始、展示替期間が休館です。
公開の予定は、吉野石膏美術振興財団や各美術館の告知で確認してください。
見どころ3選
- 小さな画面の密度 37×25.5センチという手のひらに近い大きさに、花弁と葉と花瓶が詰め込まれています。大作の《ひまわり》とは対照的な、間近で覗き込む楽しさがあります。
- 白をどう描くか 白い花瓶は、白い絵具だけでは描けません。影に置かれた青や灰の調子を追うと、画家が色で明暗をつくろうとしていたことが見えてきます。
- パリ時代という節目 暗いオランダ時代と、まばゆいアルル時代のあいだ。その橋渡しにあたる時期の作品を実見できる機会は、国内では多くありません。
この絵が日本にある理由
吉野石膏コレクションは、石膏ボードなどを手がける吉野石膏株式会社が集めたフランス近代絵画を中心とするコレクションです。1991年に18点が山形美術館へ寄託されて公開が始まり、その後も追加の寄託が重ねられて、国内有数の質を備えた作品群へと育ちました。その公開は2026年8月22日で幕を閉じています。
顔ぶれはミレーやバルビゾン派に始まり、ピサロ、マネ、ドガ、シスレー、セザンヌ、モネ、ルノワールら印象派、さらにマティス、ヴラマンク、ピカソ、ブラック、シャガール、カンディンスキーへと続きます。バルビゾン派からフォーヴィスム、キュビスム、エコール・ド・パリまでを一本の線でたどれる構成で、山形美術館ではこれを長谷川コレクションの日本美術や服部コレクションの20世紀フランス絵画と並べて紹介してきました。企業が集めた作品を地方の美術館へ預けることで、東京へ出なくても西洋近代絵画に触れられる場が生まれた好例でしたが、その寄託は終わりを迎えました。
まとめ
ファン・ゴッホ《白い花瓶のバラ》は1886年のパリ時代の油彩画で、吉野石膏コレクションの一点です。35年にわたった山形美術館での公開は2026年8月22日に終わり、次の公開先はまだ決まっていません。小さな花の絵が、のちの色彩の爆発を予告しています。


