『白光』:日本初のイコン画家・山下りん、信仰と芸術のはざまを生きた明治の女性画家
明治の日本からロシアへ渡り、日本人初のイコン(聖像画)画家となった山下りん。西洋画への憧れと信仰のはざまで揺れたその情熱の生涯を描く長編歴史小説です。
はじめに:知られざる明治の女性画家
『白光』(朝井まかて 著)は、日本人として初めてイコン(正教会の聖像画)を描いた明治の女性画家・山下りんの生涯を描く長編小説です。笠間の貧しい家に生まれ、絵師を志して家出同然に上京し、工部美術学校に学び、やがて明治の日本からロシアのサンクトペテルブルクへ渡った女性——その波乱の人生は、知られていないのが不思議なほどドラマチックです。
この本の3つの見どころ(読みどころ)
1. 「自分の絵」と「神の絵」の相克
りんが学びたかったのはルネサンス風の西洋画。しかし彼女に求められたのは、型を守るビザンティン様式のイコンでした。芸術家の自我と職人の献身の葛藤という、普遍的なテーマが貫かれています。
2. 明治初期の美術教育の実像
工部美術学校でのフォンタネージの指導、女性が絵を学ぶことへの偏見など、日本の洋画黎明期の空気が細やかに再現されます。明治美術史の副読本としても一級品です。
3. ロシアという異世界
革命前夜のロシア正教文化の描写は圧巻。日本とロシアを美術でつないだ稀有な人生を通して、文明開化の時代の熱がまっすぐ伝わってきます。
この本を読んだ後の、おすすめのアクション
りんのイコンに会いに行く: 山下りんのイコンは、御茶ノ水のニコライ堂や白凛居(笠間)などで見ることができます。読後に実物の前に立つと、静かな迫力に打たれるはずです。
まとめ
『白光』は、美術史の傍流に置かれてきた一人の女性画家を、堂々たる主人公として蘇らせた歴史小説です。明治美術に興味がある人に強くおすすめします。
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