宴の準備:セザンヌが晩年に立ち返った謎めいた宴の情景
- 作者
- ポール・セザンヌ
- 制作年
- 1890年頃
- 所蔵
- 国立国際美術館
- 所在地
- 大阪府大阪市
ポール・セザンヌが1890年頃に描いた《宴の準備》は、大阪・中之島の国立国際美術館が所蔵する油彩画です。晩年の彼には珍しい物語的な主題で、常設展示ではなく年数回のコレクション展のなかで公開されます。
ポール・セザンヌの《宴の準備》は、1890年頃に描かれた油彩画です。所蔵は大阪市北区中之島の国立国際美術館。りんごの静物やサント=ヴィクトワール山で知られるセザンヌですが、この一点は宴の情景という物語めいた主題を扱っており、晩年の作としては異例の存在です。
《宴の準備》とは
文化遺産オンラインの記録によれば、技法は油彩・カンヴァス、寸法は45.0×53.0センチ、所蔵は国立国際美術館です。制作年は1890年頃とされています。
画面には、宴の場面らしい人物たちと、青銅の器やアンフォラといった器物が描かれます。同記録の解説は、セザンヌが1860年代から70年代にかけて多く描いたこうした情念的な主題を晩年にはほとんど描かなくなったにもかかわらず、1890年前後になって再び手をつけた点を異例だと指摘しています。なぜこの絵が描かれたのかはいまも分かっておらず、食堂などの室内装飾のための下絵ではないかという説もあります。つまりこの作品は、セザンヌ研究のなかでも謎として残されている一枚なのです。
一方で、絵の組み立て方はまぎれもなくセザンヌのものです。ピンクや赤、青といった甘い色調のなかで、色を積み重ねていく構築的な筆づかいが働き、全体はピラミッド型にまとめられています。同じ解説は、全体を統合しようとする強固な意思と、安易に統合することを拒む強固な意思が拮抗している点にセザンヌ絵画の真骨頂を見ています。《宴の準備》は、その拮抗が主題の選択にまで及んだ一枚だといえるでしょう。
どこで見られる?
- 所蔵先:国立国際美術館
- 所在地:大阪府大阪市北区中之島4-2-55。中之島の川べりに立つ、展示室がすべて地下にある美術館です。
- 展示状況・観覧料:常設展示ではありません。同館のコレクション展は年に数回、会期を区切って開かれ、そのなかの「コレクション・ハイライト」という通年の枠で、セザンヌら初期のコレクションが紹介されます。ただしこの枠のなかでも作品は入れ替わるため、《宴の準備》が必ず出ているとは限りません。コレクション展の観覧料は一般430円、大学生130円、高校生以下および18歳未満と65歳以上は無料(要証明)です。金曜の17時から20時は夜間割引が適用され、一般250円、大学生70円となります。休館日は月曜(祝日の場合は翌日)と展示替え期間です。
展示状況や観覧料は所蔵館の公式サイトで確認してください。
見どころ3選
- 主題そのものが謎:宴の準備という物語的な場面は、晩年のセザンヌが手放したはずのものでした。なぜ描いたのかが分からないまま残されている、その宙づり感が本作の魅力です。
- 甘い色調と厳しい筆致:ピンク、赤、青という柔らかな色と、面を積み上げるような構築的な筆づかい。相反する二つが一つの画面で釣り合っています。
- 小さな画面の大きな構図:45.0×53.0センチという小ぶりな寸法にもかかわらず、ピラミッド型の堅固な構図が組まれています。近づいて見ると、筆の一つひとつが構造を担っていることがわかります。
この絵が日本にある理由
国立国際美術館は1977年、大阪府吹田市の万博記念公園にあった万国博美術館の建物を活用して開館しました。開館時の所蔵はわずか14点。翌1978年に化学者で収集家の大橋嘉一の遺族から828点の寄贈を受け、これが関西を中心とした戦後美術のコレクションの核となりました。
その後、建物の老朽化と収蔵スペースの不足から、2004年1月にいったん休館し、同年11月に大阪市中心部の中之島で再開館します。設計はアルゼンチン生まれの建築家シーザー・ペリ。竹の生命力と現代美術の成長をイメージした外観をもち、展示室はすべて地下という完全地下型の美術館になりました。同館は近現代美術を軸とするコレクションですが、そのなかでセザンヌはもっとも時代をさかのぼる作家の一人であり、20世紀美術の出発点として位置づけられています。近代絵画の父と呼ばれる画家の一点が大阪にあることには、館の成り立ちからみてはっきりした意味があるのです。
まとめ
《宴の準備》は、大阪・中之島の国立国際美術館で見られるセザンヌの油彩画です。ただし常設展示ではなく、年数回のコレクション展のなかで登場します。晩年のセザンヌが一度は手放したはずの主題に立ち返った、理由の分からない一枚。その分からなさごと味わえるのが、この絵の贅沢なところです。訪ねる前に、公式サイトで会期と出品作品を確かめておきましょう。

