4人の水浴の女たち(セザンヌ):ピカソやマティスが追いかけた小さな水浴図
- 作者
- ポール・セザンヌ
- 制作年
- 1877-1878年
- 所蔵
- ポーラ美術館
- 所在地
- 神奈川県箱根町
セザンヌが1877〜1878年に描いた《4人の水浴の女たち》。縦38センチほどの小さな画面に、マティスやピカソを動かした構築的な絵づくりが詰まっています。水浴図は20世紀美術の出発点となった主題です。箱根のポーラ美術館の展示室5で展示中です。
ポール・セザンヌが1877年から1878年にかけて描いた《4人の水浴の女たち》は、木立に囲まれた水辺に四人の裸婦を配した小さな油彩画です。縦38センチほどの画面ですが、後のピカソやマティスが追いかけたセザンヌの絵づくりが凝縮されています。神奈川県箱根町のポーラ美術館が所蔵しています。
4人の水浴の女たちとは
ポール・セザンヌ(1839〜1906年)は、生涯にわたって水浴図を描き続けた画家です。本作は1877年から1878年の制作で、技法は油彩/カンヴァス、寸法は38.0×46.2センチ、作品番号は002-0019です。
描かれているのは四人の裸婦です。中央の奥にひとりが立ち、腕を頭の上で組んで身体をひねっています。その左手前では別のひとりが背を向けて前かがみになり、中央の手前には白い布の上に腰を下ろした女性、右にはひざを抱えて座る女性がいます。四人はゆるやかな三角形をつくり、画面の左右の端からは木の幹が内側へ傾いて、アーチのように覆いかぶさります。
ポーラ美術館の解説によれば、本作は四、五人の裸婦をピラミッド型に配した5点の水浴図のうちの1点です。斜めに平行して置かれた構築的な筆致が画面の大部分を覆っているものの、規則性はまだいくらかゆるやかで、彼が構築的な構図へたどり着くまでの途上を思わせるといいます。内側に傾いた樹木のアーチが女性たちの傾いたポーズに反復されるなど、画面には呼応する要素が緻密に組み合わされ、印象派の絵に見られる偶然性や瞬間性とは大きく隔たった構成になっています。
どこで見られる?
- 所蔵先:ポーラ美術館
- 所在地:神奈川県足柄下郡箱根町仙石原1285
- 展示状況・観覧料:公式サイトの作品ページに「展示中(会場:展示室5)」と表示されています。観覧料は大人2,200円、大学生・高校生1,700円、中学生以下は無料です。
展示状況や観覧料は所蔵館の公式サイトで確認してください。
見どころ3選
- 斜めに揃う筆あと:草地も木々も、同じ方向へ傾いた短い筆の反復でできています。見えたままを写すのではなく、絵の具で画面を組み立てていく姿勢がよく分かります。
- 木がつくるアーチ:左右の幹が内側へ倒れ込み、四人を包み込みます。この傾きが人物の姿勢にも繰り返され、小さな画面に安定した骨組みを与えています。
- 38センチの密度:はがき数枚ほどの大きさに、後年の大きな水浴図へつながる構想が入っています。近くで見ると、絵肌の粗さと構成の緻密さの落差に驚かされます。
この絵が日本にある理由
ポーラ美術館は、ポーラ創業家二代目の鈴木常司(1930〜2000年)が40年余りをかけて集めた美術品をもとに、2002年9月、箱根に開館しました。鈴木は助言者に頼らず専門書で美術史を独学し、19世紀から20世紀の流れを体系的にたどれる西洋絵画のコレクションをつくろうとしたと美術館は説明しています。
その考え方からすると、セザンヌの水浴図は外せない主題でした。水浴図は次の世代の画家たちにとっても特別な存在だったからです。ポーラ美術館の解説によれば、マティスは《3人の水浴の女たち》を所有し、ドランは《5人の水浴の女たち》の複製画を持っていました。ピカソも、ブラックの肖像写真からセザンヌの水浴図のリトグラフを所有していたことが分かっており、1957年には《5人の水浴の女たち》を自ら購入しています。20世紀美術の出発点に置かれた主題を、いま箱根の展示室で確かめることができます。
ポーラ美術館はセザンヌの作品を複数所蔵しており、公式サイトの展示中作品一覧によれば、同じ展示室5には《アントニー・ヴァラブレーグの肖像》《プロヴァンスの風景》《アルルカン》《ラム酒の瓶のある静物》なども並びます。一人の画家が20年ほどのあいだに人物画から静物画、水浴図へと画面をどう組み替えていったのかを、その場で見比べられるのは大きな魅力です。
まとめ
《4人の水浴の女たち》は、印象派を離れたセザンヌが自分の構成原理をつかみ取っていく途中の姿を伝える作品です。ポーラ美術館の展示室5で公開されており、箱根の森の中で20世紀絵画の源流に会えます。小さな画面ですから、ぜひ時間をかけて眺めてみてください。


