最後の審判:システィーナ礼拝堂の祭壇壁を埋めつくす巨大フレスコ

最後の審判:システィーナ礼拝堂の祭壇壁を埋めつくす巨大フレスコ

名画
作者
ミケランジェロ・ブオナローティ
制作年
1536-1541年
所蔵
ヴァチカン美術館 システィーナ礼拝堂
所在地
ヴァチカン市国・ローマ

ミケランジェロが1536〜41年にシスティーナ礼拝堂の祭壇壁へ描いた壁画。同じ礼拝堂の天井画とは別の作品で、300人を超える人物が渦を巻きます。ヴァチカン美術館の見学ルートの終盤で対面できます。

《最後の審判》は、ミケランジェロが1536年から1541年にかけて、ヴァチカンのシスティーナ礼拝堂の祭壇壁に描いた巨大なフレスコ画です。同じ礼拝堂の天井画(1508〜1512年)とは別の作品で、制作されたのは天井画の完成から四半世紀ほど後、ミケランジェロが60代に入ってからのことでした。300人を超える人物が壁一面で渦を巻く、西洋美術でもっとも有名な壁画のひとつです。

最後の審判とは

祭壇の背後にある壁全体を覆うフレスコ画で、大きさはおよそ縦13.7メートル、横12メートルに及びます。主題は『マタイによる福音書』25章に語られる世の終わりの審判です。中央には裁きを下そうとする直前のキリストが描かれ、その傍らに聖母マリアが控えます。周囲には聖ペテロや聖バルトロマイをはじめとする聖人たちが集まり、下方では天使がラッパを吹いて死者を目覚めさせ、選ばれた者は上へ、罰せられた者は下へと運ばれていきます。画面右下にはダンテ『神曲』を思わせるカロンの渡し舟が現れ、上方の半円形の区画(ルネッタ)には受難の道具を運ぶ天使たちが描かれています。天井画が『創世記』にもとづく世界の始まりを語るのに対し、こちらは世界の終わりを描いた壁画です。両者は場所こそ同じ礼拝堂ですが、天井と祭壇壁という別の面に、別の時期に描かれたまったく異なる作品です。壁画の技法はフレスコで、塗った漆喰が乾ききる前に絵具をのせていくため、描き直しがきかず一日ごとに区切って進める必要があります。この規模の画面を、300人を超える人物とともにその方法で仕上げた点に、完成までに4年以上を要した理由があります。

どこで見られる?

  • 所蔵先:ヴァチカン美術館 システィーナ礼拝堂
  • 都市:ヴァチカン市国(ローマ市内)
  • 展示室:システィーナ礼拝堂の祭壇壁。礼拝堂は美術館の見学ルートの終盤に位置し、そこだけを訪ねることはできません
  • 予約の要否:世界屈指の混雑施設のため、公式サイトでの日時指定オンライン予約が強く推奨されています。礼拝堂内は写真撮影が禁止され、静粛が求められます

開館時間や入館料は所蔵館の公式サイトで確認してください。

見どころ3選

  • 渦を巻く構図:地上から昇る者と落ちていく者が大きな円環を描き、キリストが右手を上げる動作ひとつで画面全体が回りはじめたように見えます。区画に分けず一続きの空間として描かれている点が天井画との大きな違いです。
  • 聖バルトロマイの皮:剥がされた自分の皮を手にした聖バルトロマイが描かれ、その皮の顔はミケランジェロの自画像だと考えられています。壁画の中に作者自身が潜んでいるわけです。
  • 肉体だけで構成された壁面:建築的な枠組みをほとんど設けず、人体そのもので壁一面を埋めています。彫刻家として培った身体感覚が、そのまま絵に置き換えられています。

描かれた背景

システィーナ礼拝堂には、ミケランジェロの手になる大作が二つあります。ひとつは教皇ユリウス2世の依頼で1508年から1512年に描かれた天井画で、中央に『創世記』の9場面、その左右に12人の預言者と巫女、四隅にはイスラエルの救済を語る場面が配されています。もうひとつが本作《最後の審判》で、教皇パウルス3世のもと1536年から1541年に祭壇壁へ描かれました。礼拝堂に入った人は、始まりと終わりというこの二つの主題を同時に見ることになります。完成当時、おびただしい数の裸体像は激しい批判を呼びました。1564年、トリエント公会議の決定を受けて一部の人物に腰布が描き加えられ、その作業を担ったダニエレ・ダ・ヴォルテッラは「ブラゲットーネ(ズボン屋)」とあだ名されています。20世紀後半には大規模な修復が行われ、煤で覆われていた色彩が本来の鮮やかさを取り戻しました。

まとめ

《最後の審判》は、天井画と並ぶミケランジェロのもう一つの代表作であり、両者は主題も制作時期も異なる別の作品です。記事によっては両者が混同されることもありますが、天井画は世界の始まり、祭壇壁は世界の終わりを扱った、制作時期も依頼者も異なる二つの大作です。ヴァチカン美術館を訪ねる際は、天井を見上げるだけでなく、正面の祭壇壁にもぜひ時間を割いてください。長い展示ルートを歩いた先に現れるため、体力と時間の配分も大切です。事前のオンライン予約が快適な鑑賞の鍵になります。