ブーシェ《アウロラとケファロス》:名古屋で見る2メートル超のロココ大作
- 作者
- フランソワ・ブーシェ
- 制作年
- 1745年頃
- 所蔵
- ヤマザキマザック美術館
- 所在地
- 愛知県名古屋市
ヤマザキマザック美術館(名古屋市)が所蔵するブーシェ《アウロラとケファロス》は1745年頃の油彩画。縦横2メートルを超える画面に、曙の女神と美青年ケファロスの神話を甘美に描いた、同館が誇るロココ絵画の名品です。常設展示で公開されています。
ヤマザキマザック美術館(愛知県名古屋市)が所蔵するフランソワ・ブーシェの《アウロラとケファロス》は、1745年頃に描かれた大画面の油彩画です。ローマ神話の曙の女神アウロラと美青年ケファロスの物語を主題とし、縦横ともに2メートルを超えます。18世紀フランスのロココ絵画を、日本で体感できる代表的な一点です。
《アウロラとケファロス》とは
作者はロココ美術を代表するフランスの画家フランソワ・ブーシェ(1703〜1770年)です。ポンパドゥール夫人に重用され、宮廷の趣味を絵画に翻案した画家として知られます。本作の制作は1745年頃、技法は油彩で、縦横2メートルを超える堂々たる大きさをもちます。
主題はローマ神話です。曙の女神アウロラ(ギリシア神話のエオス)は、狩人の青年ケファロスに強く心を惹かれます。夜明けを告げる女神と、地上の若者との恋という取り合わせは、雲や光をふんだんに描き込めるため、ロココの画家たちが好んだ画題でもありました。
ブーシェは、この神話を重々しい教訓画としてではなく、甘美で装飾的な情景として描き出します。金色を帯びた光に包まれた雲、青緑と橙の対比が効いた衣のドレープ、丸みを帯びた身体、宙を舞う天使たち。女神の馬車を引く白馬や、狩人ケファロスを示す猟犬と獲物も配され、物語を読み解く楽しみがあります。壁面を飾ることを前提とした大作らしく、離れて眺めるほど画面全体が軽やかに見えてくる構成です。
ロココ絵画は、ルイ15世の時代に流行した様式です。バロックの荘重さに代わって、貴族の邸宅を飾る優美さと官能性が求められました。ブーシェはその中心にいた画家で、絵画だけでなくタピスリーの下絵や舞台装置まで手がけ、宮廷の生活空間そのものをデザインしています。神話の登場人物が、どこか同時代の貴婦人のように見えるのも、この様式の特徴といえるでしょう。
どこで見られる?
- 所蔵先 ヤマザキマザック美術館
- 所在地 愛知県名古屋市東区葵1-19-30
- 展示状況 同館は所蔵品を年代順に並べる常設展示を基本としており、本作はロココの絵画を集めた展示室で公開されています。館が「誇るロココ絵画の名品」として紹介する作品ですが、展示替えや貸し出しの可能性はあります。
- 観覧料 一般1,000円、小・中・高生500円、小学生未満は無料。10名以上の団体は一般800円です。特別展の期間は一般1,300円、団体1,100円になります。
- 開館時間・休館日 平日は10時から17時30分、土日祝は10時から17時(いずれも最終入館は閉館30分前)。月曜(祝日の場合は翌日)、展示替期間、年末年始が休館です。
展示状況や観覧料は所蔵館の公式サイトで確認してください。
見どころ3選
- 圧倒的なスケール 縦横2メートルを超える画面は、日本で見られるロココ絵画としては破格の大きさです。近づくと視界が絵で埋まり、当時の邸宅の壁面を飾った効果がそのまま体験できます。
- ロココの色 金色の雲、青緑の衣、橙のドレープ。輪郭をきつく締めずに色面を重ねる手法が、夜明けの湿った空気そのものを画面に呼び込みます。
- 展示室ごとの演出 同館は時代のイメージに合わせて壁布の色を変えており、ロココの作品は赤い壁面の部屋に掛けられています。額縁だけでなく空間ごと味わえるのが同館の特色です。
この絵が日本にある理由
ヤマザキマザック美術館は、工作機械メーカー・ヤマザキマザックの経営に携わり、同館の創立者で初代館長でもある山崎照幸氏が長年かけて集めた美術品をもとに、2010年4月に名古屋市東区で開館しました。企業ゆかりの美術館ですが、収蔵の柱は機械ではなくフランス美術です。
コレクションの特徴は、18世紀から20世紀に至るフランス美術300年の流れを一望できるように構成されている点にあります。ヴァトー、ブーシェ、フラゴナール、シャルダンといったロココの巨匠に始まり、新古典主義のアングル、ロマン主義のドラクロワ、写実主義、印象派、そしてエコール・ド・パリまで。5階の絵画展示に加え、4階ではエミール・ガレらアール・ヌーヴォーのガラス工芸や家具が、実際に使われていた空間を思わせる形で並びます。《アウロラとケファロス》は、この長い物語の出発点に置かれた作品です。
まとめ
ブーシェ《アウロラとケファロス》は1745年頃の大作で、ヤマザキマザック美術館の常設展示で見ることができます。名古屋の地下鉄駅から直結という通いやすさも魅力です。フランス美術300年の流れを、ロココの甘やかな夜明けから追いかけてみてください。



