エリザベート・ヴィジェ・ルブラン:マリー・アントワネットを描いた女性画家、革命を生き延びた肖像画の名手

エリザベート・ヴィジェ・ルブラン:マリー・アントワネットを描いた女性画家、革命を生き延びた肖像画の名手

画家

王妃マリー・アントワネットの信頼を一身に受け、30点以上の肖像を描いた女性画家。革命の夜にパリを脱出し、ヨーロッパ中の宮廷を渡り歩いた波乱の生涯は、一級の歴史ドラマです。

はじめに:18世紀でもっとも成功した女性画家

エリザベート・ヴィジェ・ルブラン(1755-1842)は、フランスの肖像画家です。画家の娘として生まれ、10代で肖像画家として自立。1778年から王妃マリー・アントワネットの公式画家となり、女性にほぼ門戸を閉ざしていた王立アカデミーにも王命により迎えられました。フランス革命勃発の夜にパリを脱出し、イタリア、ウィーン、ロシアの宮廷で描き続けた国際的キャリアの持ち主です。

絶対に知っておきたい!3つの見どころ

1. 「薔薇を持つマリー・アントワネット」——王妃の公式イメージ

青灰色のドレスで薔薇を手にする王妃の肖像は、浪費家と批判された王妃の「気品ある母・妻」イメージを打ち出す政治的な一枚でもありました。王妃と画家、同い年の二人の信頼関係がこの穏やかな表情を生んでいます。

2. 「娘ジュリーとの自画像」——母であることを描く

娘を抱きしめて微笑む自画像は、「画家である私」と「母である私」を同時に肯定した、美術史上画期的な自己表現です。歯を見せた微笑が「はしたない」と非難された逸話は、時代の壁の高さを物語ります。

3. 回想録という遺産

晩年に著した回想録は、革命前夜の宮廷、亡命先の各国宮廷を活写した第一級の史料であり、読み物としても抜群に面白い一冊です。

初心者が楽しむための鑑賞のコツ

  • 布と髪の「柔らかさ」: ルブランの筆はモスリンの襟巻きや巻き毛の柔らかさを描く名手。人物の人柄まで柔らかく見せる技術です。
  • ハプスブルクの物語と: 当サイトで紹介している『名画で読み解くハプスブルク家12の物語』とあわせると、王妃の肖像の背景が立体的になります。

まとめ

ヴィジェ・ルブランは、才能と機転で18世紀の男性社会を渡り切った画家です。その肖像画は、モデルと画家、二人の女性の物語として見ると一層深く味わえます。

代表作ギャラリー

薔薇を持つマリー・アントワネット
薔薇を持つマリー・アントワネット1783年ヴェルサイユ宮殿
娘ジュリーとの自画像
娘ジュリーとの自画像1786年ルーヴル美術館
麦わら帽子の自画像
麦わら帽子の自画像1782年ロンドン・ナショナル・ギャラリー

作品画像はパブリックドメイン(出典: Wikimedia Commons)