マーク・ロスコ:色彩の層に精神性を宿した、抽象表現主義の瞑想的巨匠

マーク・ロスコ:色彩の層に精神性を宿した、抽象表現主義の瞑想的巨匠

画家

ロシア生まれの移民として渡米し、色面を重ねる独自様式で抽象表現主義を代表する画家となったロスコ。高級レストランの装飾委嘱を自ら撤回した壁画は、巡り巡って日本の美術館にも安住の地を見出した。

はじめに:色彩そのもので精神を描く

マーク・ロスコ(1903-1970)は、抽象表現主義、なかでも色面を用いて表現する「カラーフィールド・ペインティング」を代表するアメリカの画家です。輪郭のぼやけた色面の矩形が重なり合う作品は、単なる色彩の実験ではなく、鑑賞者に瞑想的・精神的な体験をもたらすことを目指したものでした。

生涯:ロシアからの移民、そして商業主義との対決

ロシア帝国(現ラトビア)のユダヤ人家庭に生まれたロスコは、1913年に家族とともにアメリカへ移住しました。イェール大学を中退後ニューヨークへ移り、画家ミルトン・アヴェリーらとの交流を通じて画業を志します。当初は具象画を描いていましたが、1940年代後半に色面が浮遊する独自の様式を確立しました。1958年、ニューヨークの高級レストラン「フォー・シーズンズ」の壁画装飾を依頼され約30点を制作しますが、完成間近に実際にそのレストランで食事をした際、豪奢で商業的な空気に強い嫌悪感を抱き、報酬を返還して契約から降りるという逸話が残っています。この「シーグラム壁画」は後にロンドンのテート・ギャラリーへ寄贈され、その到着日は奇しくもロスコが自ら命を絶った日と同じ1970年2月25日でした。

3つの代表作解説

  • シーグラム壁画(テート、ナショナル・ギャラリー・オブ・アートほか): レストラン装飾用に描かれながら画家自身が撤回し、最終的に美術館という「瞑想の場」に落ち着いた連作。かつて日本の川村記念美術館にも常設展示されていました。
  • ナンバー61(錆と青)(ロサンゼルス現代美術館): 多色の矩形が層状に重なり、輪郭がぼやけて「内なる光」を放つような効果を特徴とする、成熟期の色面様式を代表する一点です。
  • ナンバー14、1960年(サンフランシスコ近代美術館): オレンジとダークブルーの色面が紫がかった地の上に浮かぶ縦約2.9メートルの大作。同館屈指の看板コレクションとして紹介されています。