オディロン・ルドン:黒の悪夢から色彩の楽園へ、目に見えない世界を描いた幻想の画家
一つ目の巨人や宙に浮かぶ眼球など「黒(ノワール)」の幻想版画から出発し、50代で一転して色彩の花々を咲かせたオディロン・ルドン。夢と無意識を描き続けた象徴主義の巨匠の生涯。
はじめに:印象派と同世代の、まったく別の道
オディロン・ルドン(1840-1916)は、19世紀末フランスの画家・版画家です。モネと同じ年に生まれながら、光あふれる屋外を描いた印象派とは正反対に、目を閉じた内面の世界、夢と幻想の領域を描き続けました。一つ目の巨人、宙に浮かぶ眼球、微笑む蜘蛛。木炭と石版画による「黒(ノワール)」の時代から、一転して花々の輝く色彩の時代へ。その劇的な変貌も含めて、象徴主義を代表する存在です。
生涯:孤独な「黒」の時代から、光あふれる晩年へ
ボルドーに生まれたルドンは、病弱だった幼少期を郊外の寂しい領地で過ごし、この孤独な原体験が生涯の芸術の土壌となりました。植物学者アルマン・クラヴォーとの交流から顕微鏡の中の世界に触れ、科学と幻想が交差する独自のイメージを育てます。40代までは木炭画と石版画による「ノワール」に専念し、文学者ユイスマンスの小説『さかしま』で紹介されたことで、世紀末の文学者・芸術家たちの熱烈な支持を得ました。50代に入ると、突如として画面に色彩があふれ出します。パステルと油彩で描かれる花束、蝶、神話の場面。暗闇から光へのこの転身は、美術史でも類を見ない鮮やかさです。晩年には貴族の城館の食堂を飾る装飾画も手がけ、色彩の幻想はますます自由に羽ばたきました。
3つの代表作解説
- キュクロプス(オランダ、クレラー・ミュラー美術館): 眠るニンフを山陰から見つめる、一つ目の巨人ポリュフェモス。怪物でありながらどこか哀しく愛らしい、ルドンの幻想の代名詞です。
- 眼=気球: 眼球がそのまま気球になって空へ昇っていく石版画。「見ること」そのものを幻想に変えたノワール時代の代表作です。
- グラン・ブーケ(大きな花束)(三菱一号館美術館): フォンフロワド城館の食堂を飾った、高さ2.5メートルの巨大なパステル画。日本では三菱一号館美術館が所蔵する、色彩時代の集大成です。
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