ジョン・エヴァレット・ミレイ:《オフィーリア》を描いた神童、ラファエル前派の若き旗手
史上最年少でロイヤル・アカデミーに入学した神童ジョン・エヴァレット・ミレイ。ラファエル前派を結成し、川に浮かぶ《オフィーリア》で英国美術史に不滅の名を刻んだ画家の生涯。
はじめに:英国で最も愛される名画を描いた男
ジョン・エヴァレット・ミレイ(1829-1896)は、19世紀英国の画家です。1848年、20歳前の仲間たちとともに「ラファエル前派兄弟団」を結成し、細部まで妥協なく自然を描く革新的な絵画で美術界に旋風を巻き起こしました。シェイクスピア『ハムレット』の悲劇のヒロインを描いた《オフィーリア》は、英国絵画で最も有名な作品のひとつとして、今もテート・ブリテンで多くの人々を魅了し続けています。
生涯:神童、反逆者、そしてアカデミー会長へ
ミレイは幼い頃から絵の天才として知られ、11歳で英国王立美術院(ロイヤル・アカデミー)の付属美術学校に史上最年少で入学しました。しかしその「模範生」は、19歳のときロセッティ、ハントらとラファエル前派を結成し、アカデミーの教育に反旗を翻します。細密描写を極めた《両親の家のキリスト》は「神聖な場面を大工の作業場のように描いた」と酷評されましたが、評論家ジョン・ラスキンの擁護で潮目が変わりました。やがてミレイはラスキンの妻だったエフィーと恋に落ち、彼女の婚姻無効成立を経て結婚するという、ヴィクトリア朝を騒がせた恋愛事件の当事者にもなります。後年は肖像画や子どもの絵で国民的な人気を博し、1896年にはロイヤル・アカデミー会長に選出。かつての反逆児は、英国美術界の頂点でその生涯を閉じました。
3つの代表作解説
- オフィーリア(ロンドン、テート・ブリテン): 川に浮かびながら歌い、沈んでいくオフィーリアを描いた傑作。背景の植物は川辺で数カ月かけて写生され、モデルのエリザベス・シダルは水を張った浴槽に横たわり続けたという逸話も有名です。
- 両親の家のキリスト: 大工ヨセフの作業場の少年キリストを、理想化を排して描いた問題作。ディケンズにまで酷評されましたが、ラファエル前派の理念を最も純粋に体現した作品です。
- シャボン玉: シャボン玉を見上げる幼い少年を描いた晩年の人気作。石鹸会社の広告に使われたことで、美術と広告の関係をめぐる論争も呼びました。
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ミレイが結成した運動の全体像はラファエル前派の記事で解説しています。ラファエル前派が反発した規範についてはラファエロ・サンティを、同時代の英国絵画はターナーをどうぞ。
