ロイ・リキテンスタイン:漫画のひとコマを美術館へ、ベンデイドットのポップアート巨匠
アメコミのひとコマを巨大なカンヴァスに拡大し、印刷の網点(ベンデイドット)ごと手描きで再現したロイ・リキテンスタイン。ウォーホルと並ぶポップアートの巨匠の、クールで知的な芸術の全貌。
はじめに:「複製」を手で描くという逆説
ロイ・リキテンスタイン(1923-1997)は、アンディ・ウォーホルと並んでポップアートを代表するアメリカの画家です。恋愛漫画や戦争漫画のひとコマを巨大画面に拡大し、安価な印刷に使われる網点「ベンデイドット」まで、一つひとつ手で描き写しました。大量生産されるイメージを、あえて精密な手仕事で絵画にする。このクールな逆説によって、「芸術とは何か」「オリジナルとは何か」を問い続けました。
生涯:漫画のコマから始まった革命
ニューヨークに生まれたリキテンスタインは、大学で美術を学び教壇にも立つ、いわばアカデミックな経歴の持ち主でした。長く抽象画を描いていましたが、1961年、子どもに「パパはこんなに上手に描けないでしょ」とガムの包み紙の漫画を見せられたことがきっかけで(諸説あります)、漫画を主題にした絵画を開始。ミッキーマウスを描いた《ルック・ミッキー》を皮切りに、恋に悩む女性や戦闘機の爆発を描いた巨大な「漫画絵画」を発表し、一躍時代の寵児となりました。当初は「美術の堕落」と激しく非難されましたが、リキテンスタインは動じることなく、やがてモネやピカソら美術史の名画までも網点で「翻訳」するシリーズへ展開。彫刻や壁画も手がけ、20世紀美術の巨匠としての地位を不動のものにしました。
3つの代表作解説
- Whaam!(ロンドン、テート): 戦闘機がミサイルで敵機を撃墜する漫画のコマを、幅4メートルの二連画に拡大した代表作。暴力的な場面を極度にクールに処理した画面が、逆に戦争イメージの空虚さを浮かび上がらせます。
- 溺れる少女: 「助けを呼ぶくらいなら溺れたほうがまし!」という台詞とともに波に沈む少女。メロドラマの誇張を切り取った、ポップアートのアイコンです。
- ヘアリボンの少女(東京都現代美術館): 金髪の少女の顔を描いた代表作のひとつで、日本では東京都現代美術館が所蔵。購入時に大きな話題を呼んだことでも知られ、今では同館の顔となっています。
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