マリー・ローランサン:灰色とパステルカラーの夢、エコール・ド・パリに咲いた乙女の画家
淡いグレーとピンクの色調で夢見るような乙女たちを描き、エコール・ド・パリで独自の地位を築いたマリー・ローランサン。詩人アポリネールとの恋でも知られる、パリの女性画家の華やかで孤独な生涯。
はじめに:誰にも似ていない、ローランサンの色
マリー・ローランサン(1883-1956)は、20世紀前半のパリで活躍したフランスの女性画家です。灰色がかったパステルカラーの色調に、黒い瞳の夢見るような乙女たち。キュビスムの隆盛期にあっても、フォーヴィスムの熱狂にも染まらず、「私は私の絵を描く」と言わんばかりの優美な様式を貫きました。その甘く、どこか寂しげな画面は、今も世界中に熱心なファンを持っています。
生涯:モンマルトルの青春と、流転の人生
パリに私生児として生まれたローランサンは、磁器の絵付けを学んだ後に絵画へ転向し、若き芸術家たちが集うモンマルトルの「洗濯船(バトー・ラヴォワール)」でピカソやブラックと出会いました。ピカソの紹介で知り合った詩人ギヨーム・アポリネールとの恋は、彼女の青春そのものでしたが、やがて破局。アポリネールが失意の中で書いた詩「ミラボー橋」は、二人の恋の記念碑として今も愛誦されています。ドイツ人男爵との結婚により、第一次大戦中は敵国人としてスペインへの亡命を余儀なくされるなど、流転の日々を経験しました。離婚して1921年にパリへ戻ると、時代は彼女に追い風となります。優美な女性像は狂乱の20年代のパリで大人気を博し、肖像画の注文が殺到、バレエ・リュスの舞台美術も手がけました。日本では、世界的にも珍しいローランサンの専門美術館が開かれたほど、深く愛されている画家です。
3つの代表作解説
- アポリネールとその友人たち: アポリネール、ピカソら仲間たちと自身を描いた群像肖像画。モンマルトルの青春の記念写真のような、初期の重要作です。
- シャネル嬢の肖像: デザイナーのココ・シャネルを描いた肖像画。シャネル本人は「私に似ていない」と受け取りを拒否したという逸話とともに有名です。
- 優雅な舞踏会(バレエの女たち): 淡い色彩の中で楽器を奏で、踊る女性たち。ローランサン様式の完成形ともいえる、夢幻的な世界です。
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