シャイム・スーティン:歪む風景と肉塊、魂を絞り出したエコール・ド・パリの野獣

シャイム・スーティン:歪む風景と肉塊、魂を絞り出したエコール・ド・パリの野獣

画家

リトアニアのユダヤ人村から無一文でパリへ。スーティンは風景も静物も人物も、絵の具の渦の中でのたうつように描きました。モディリアーニが愛した、エコール・ド・パリで最も激しい画家です。

はじめに:絵の具がのたうつ

シャイム・スーティン(1893-1943)は、リトアニアの貧しいユダヤ人村に生まれ、パリに出てエコール・ド・パリの一員となった画家です。安アパート「ラ・リューシュ」で極貧生活を送りながら、風景も人物も静物も、激しくうねる筆致で描きました。親友モディリアーニは「彼は天才だ」と周囲に言い続けたと伝わります。

絶対に知っておきたい!3つの見どころ

1. 牛の屠体——美術史上もっとも激しい静物画

スーティンはレンブラントの「屠殺された牛」に感動し、アトリエに実物の牛の屠体を持ち込んで腐敗と戦いながら描き続けました。赤と青が渦巻くその連作は、生と死そのものを絵の具にしたような衝撃を放ちます。

2. 歪む風景——セレの連作

南仏セレで描かれた風景画では、家も木も道も、竜巻に巻き込まれたように歪みうねります。見たままではなく、感じた強度をそのまま画面に叩きつける表現主義の極北です。

3. 給仕人たちの肖像

ホテルのベルボーイや菓子職人など、名もない働き手を正面から描いた肖像連作も重要です。ぎこちなく組まれた手、不安げな目。社会の隅で生きる人々への共感が滲みます。

初心者が楽しむための鑑賞のコツ

  • 筆の速度を追体験する: 絵の具の盛り上がりと筆の軌跡を目でなぞると、描いているときの画家の身体の動きと興奮が伝わってきます。
  • モディリアーニとセットで: 静のモディリアーニ、動のスーティン。対照的な親友同士を並べて見ると、エコール・ド・パリの幅の広さが実感できます。

まとめ

スーティンは「上手さ」の物差しを無効にする画家です。のちの抽象表現主義の画家たちも彼を仰ぎ見ました。魂を直接ぶつけたような絵の力を体感してください。