モーリス・ドニ:「絵とは平らな面である」、20世紀絵画を予言したナビ派の理論家
「絵画とは本質的に、ある秩序のもとに集められた色彩に覆われた平面である」。20歳でこの宣言を書いたドニは、ナビ派の理論的支柱にして、優しい宗教画を描いた「美しきイコンのナビ」でした。
はじめに:20歳の宣言が美術史を変えた
モーリス・ドニ(1870-1943)は、ナビ派の画家にして理論家です。1890年、弱冠20歳で発表した「絵画とは、軍馬や裸婦や何らかの逸話である以前に、本質的に、ある秩序のもとに集められた色彩に覆われた平らな面である」という一文は、絵画を「何を描くか」から「いかに構成するか」へ転換させ、20世紀抽象絵画の到来を予言した宣言として美術史に刻まれています。
絶対に知っておきたい!3つの見どころ
1. 「ミューズたち」——装飾としての絵画
代表作「ミューズたち」では、公園の女性たちと木々が、タペストリーのように平坦で装飾的な画面に織り込まれます。理論家の絵は理屈っぽいと思いきや、どこまでも優美で夢見るような世界です。
2. 「美しきイコンのナビ」の宗教画
敬虔なカトリックだったドニは、妻マルトを聖母のように描き、日常の光景に宗教的な清らかさを与えました。20世紀に入ると宗教美術の復興運動に力を注ぎ、教会装飾を数多く手がけます。
3. セザンヌを世に知らしめた批評家
ドニは「セザンヌ礼賛」という絵を描き、評論でもセザンヌの偉大さをいち早く論じました。ナビ派世代がセザンヌを「近代絵画の父」に押し上げていく、その中心にドニがいたのです。
初心者が楽しむための鑑賞のコツ
- 「宣言」を思い出しながら見る: ドニの絵の前で「これは平らな面の上の色の秩序だ」とつぶやいてみてください。風景が突然、音楽のような抽象的リズムに見えてきます。
- ナビ派仲間と見比べる: 同じ主題でも、ボナールは色彩へ、ヴュイヤールは室内へ、ドニは清らかな理想へ向かいました。三人の違いを見比べるとナビ派が立体的にわかります。
まとめ
ドニは、絵筆と言葉の両方で近代絵画の扉を開けた稀有な存在です。理論と抒情が同居するその作品は、「考える絵画」の楽しさを教えてくれます。