ルドン《ペガサスにのるミューズ》:群馬で見る「黒」から色彩へ転じた飛翔

ルドン《ペガサスにのるミューズ》:群馬で見る「黒」から色彩へ転じた飛翔

名画
作者
オディロン・ルドン
制作年
1907-10年
所蔵
群馬県立近代美術館
所在地
群馬県高崎市

群馬県立近代美術館(高崎市)が所蔵するルドン《ペガサスにのるミューズ》は1907〜10年の油彩画。白黒の幻想画家が50歳を過ぎて色彩へ踏み出した時期の作で、詩と絵画と知による飛翔を象徴します。設備更新工事による休館を経て、同館は2026年9月19日にリニューアルオープン。コレクション展示での公開は会期によります。

群馬県立近代美術館(群馬県高崎市)が所蔵するオディロン・ルドンの《ペガサスにのるミューズ》は、1907年から10年にかけて描かれた油彩画です。翼をもつ天馬にまたがる詩神が、色彩の靄のなかを飛び立とうとしています。黒一色の版画で知られたルドンが、色彩の画家へと生まれ変わった時期を示す一点です。

《ペガサスにのるミューズ》とは

作者はフランスの画家オディロン・ルドン(1840〜1916年)です。制作年は1907年から10年、技法は油彩・カンヴァス、寸法は73.5×54.4センチです。

ルドンは長いあいだ、木炭と石版画による白黒の作品を発表し続けた画家でした。目玉の気球や微笑む蜘蛛といった奇怪な幻想は「黒」の世界と呼ばれ、同時代の印象派とはまったく異なる道を歩んでいました。その画家が50歳を過ぎてから色彩に踏み出し、パステルと油彩で花や神話を描くようになります。

群馬県立近代美術館の解説によれば、ペガサスに乗るミューズは、詩と絵画と知の力による飛翔を象徴する主題であり、本作にはルドン自身の人生の転換点を謳い上げる高揚感があらわれています。暗い幻想から明るい色彩へ。画題と画家の歩みが重なる、めずらしい作品です。

ペガサスはギリシア神話に登場する翼をもつ馬で、その蹄が大地を打った場所から詩神ムーサ(ミューズ)たちの泉が湧いたと伝えられます。天馬と詩神の組み合わせは、それゆえ古くから芸術的な霊感の比喩として描かれてきました。ルドンはこの主題を何度も取り上げており、幻想と象徴を手放さないまま色彩の世界へ進んでいったことがうかがえます。

どこで見られる?

  • 所蔵先 群馬県立近代美術館
  • 所在地 群馬県高崎市綿貫町992-1(群馬の森公園内)
  • 展示状況 同館の海外近代美術のコレクションは、コレクション展示で順次公開されます。常設で必ず出ているわけではなく、会期ごとに入れ替わる点に注意が必要です。なお同館は設備更新工事のため、2025年12月17日から2026年9月(予定)まで長期休館しています。
  • 観覧料 コレクション展示は一般300円、大高生150円。20名以上の団体は一般240円、大高生120円です。企画展は展示によって料金が異なります。
  • そのほか 同館はルドンのパステル画《聖セバスティアヌス》(1910年頃)も所蔵しています。

展示状況や観覧料は所蔵館の公式サイトで確認してください。

見どころ3選

  • 飛翔する構図 黒い天馬が前脚を高く上げ、詩神は光の方向へ顔を向けます。足場となる地面ははっきり描かれず、上下の感覚がゆらぐ構図が夢のような印象を生みます。
  • 色彩の靄 背景は具体的な風景ではなく、金色と青、桃色が溶け合う光の層です。画面の下部にだけ大輪の花がほのかに咲き、上へ向かうほど色が光にとけていきます。
  • 「黒」から「色」への転回 白黒の幻想画家として出発したルドンが、晩年に到達した明るさそのものが見どころです。象徴的な主題と画家の実人生が響き合っています。

この絵が日本にある理由

群馬県立近代美術館は1974年秋、高崎市の群馬の森公園内に開館した県立美術館です。設計は磯崎新で、公園の緑のなかに端正な箱を並べたような建物自体も見どころになっています。

同館は日本の近現代美術と群馬ゆかりの作家を収集の柱としながら、海外近代美術のコレクションも築いてきました。ゴヤ、ピサロ、モネ、ルノワール、モロー、ルドン、ムンク、ルオー、ピカソ、ローランサン、デュフィ、そしてロダンやブールデル、ヘンリー・ムーアといった彫刻家まで、19世紀から20世紀にかけての流れを追える顔ぶれがそろいます。象徴主義から印象派、エコール・ド・パリへと連なるこの並びのなかで、ルドンは幻想と色彩をつなぐ位置を占めています。

県立館らしく、地元にゆかりの深い作品も同居しています。海外の近代美術と日本の近代洋画、そして群馬の作家たちが同じ館内で並ぶ構成は、ひとつの流れを比べながら見るのに向いています。ルドンの前後を歩けば、印象派の光と象徴主義の幻想が同じ時代に共存していたことが実感できるはずです。

まとめ

ルドン《ペガサスにのるミューズ》は1907年から10年の油彩画で、群馬県立近代美術館が所蔵しています。コレクション展示で順次公開される作品のため、訪問前の確認は欠かせません。長期休館が明けたら、群馬の森の緑とともに訪ねてみたい一点です。