ナポレオン一世の戴冠式:190人が並ぶルーヴル最大級の歴史画

ナポレオン一世の戴冠式:190人が並ぶルーヴル最大級の歴史画

名画
作者
ジャック=ルイ・ダヴィッド
制作年
1807年
所蔵
ルーヴル美術館
所在地
フランス・パリ

ジャック=ルイ・ダヴィッドが1807年に完成させた縦6.21メートル、横9.79メートルの巨大な歴史画。1804年12月2日のノートルダム大聖堂での戴冠式を約190人の人物とともに再現しています。ルーヴル美術館ドゥノン翼702番展示室で公開中です。

《ナポレオン一世の戴冠式》は、ジャック=ルイ・ダヴィッドが1805年から1807年にかけて描き上げた、縦6.21メートル、横9.79メートルという巨大な歴史画です。1804年12月2日、パリのノートルダム大聖堂で行われた戴冠の儀式を、約190人の人物とともに一枚の画面に再現しています。現在はルーヴル美術館ドゥノン翼、大画面のフランス絵画を集めた展示室に掛けられています。

《ナポレオン一世の戴冠式》とは

ルーヴル美術館が用いる正式な題名は《1804年12月2日、パリのノートルダム大聖堂における皇帝ナポレオン一世の聖別と皇后ジョゼフィーヌの戴冠》、原題はLe Couronnement de l'empereur Napoléon Ier et de l'impératrice Joséphine dans la cathédrale Notre-Dame de Paris, le 2 décembre 1804です。技法は油彩・カンヴァス、寸法は縦6.21メートル、横9.79メートル、所蔵番号はINV 3699(旧番号MR 1437)。ナポレオンがダヴィッドに制作を命じたのは、式典の3か月前にあたる1804年9月のことでした。ダヴィッドは舞台美術家イニャツィオ・エウジェニオ・デゴッティと、弟子のジョルジュ・ルージェの協力を得て、1805年12月から1807年11月まで筆を執っています。画家は10万フランを求めましたが、実際に受け取った報酬は6万5000フランでした。

どこで見られる?

  • 所蔵先:ルーヴル美術館 絵画部門
  • 都市:フランス・パリ
  • 展示室:ドゥノン翼 1階(Level 1、日本式の数え方では2階)702番展示室「ダリュ室」
  • 予約の要否:予約は必須ではありませんが、公式サイトでの時間指定オンライン予約が推奨されています。火曜日は休館です。

開館時間や入館料は所蔵館の公式サイトで確認してください。

見どころ3選

  • 皇后に冠を授ける一瞬:描かれているのは、ナポレオンが自分の頭に二つの冠を順に載せたあと、二つめの冠を両手で高く掲げ、ひざまずくジョゼフィーヌに授けようとする瞬間です。教皇ピウス七世は背後に座って立ち会うだけの存在に置かれ、権威の源が宗教ではなく皇帝自身にあることが構図そのもので語られています。
  • 93人分の実在の肖像:画面上の約190人のうち、93人(男性59人、女性33人、子ども1人)は実在の人物の肖像として特定されています。多くはダヴィッドのアトリエで、儀式で実際に着用した衣装を身につけてポーズをとりました。
  • その場にいなかった人物:中央上部の桟敷に座るナポレオンの母レティツィアをはじめ、実際には出席していない4人が政治的な配慮から描き加えられています。彼女はこのときローマに滞在していました。ダヴィッドはさらに、聖職者の一人の顔立ちにユリウス・カエサルの面影をひそませています。皇帝を古代ローマの英雄に重ねる賛辞であると同時に、その後の運命を思えば不吉な暗示にもなっています。

描かれた背景

ジョゼフィーヌの戴冠が画面の中心に据えられたのは、単に夫婦の情愛を示すためではありません。旧体制の貴族社会、革命、共和政という、たがいに相容れないフランスの記憶を一人の人物のうちに束ね直す和解の象徴として、皇后が選ばれたのだと解釈されています。完成した作品は1808年2月にルーヴルで公開され、続いて同年のサロンに出品されました。その後ルイ=フィリップの命でヴェルサイユ宮殿へ移され、1837年から1889年まで同宮殿に置かれたのち、1889年にルーヴルへ移されて現在に至ります。注目したいのは、ヴェルサイユ宮殿の「戴冠の間」に現在掛かっているのが単なる複製ではないという点です。あれはダヴィッド自身がアメリカの実業家たちの依頼を受け、1808年から1822年にかけて制作した等身大の第二ヴァージョンです。二枚目はダヴィッドがブリュッセルに亡命していた時期に完成し、19世紀を通じてアメリカとヨーロッパを巡回したのち、1947年にヴェルサイユが取得、1948年に戴冠の間へ据えられました。同じ画家の手による二枚を、パリと郊外で見比べられるわけです。

まとめ

《ナポレオン一世の戴冠式》は、新古典主義の技術を総動員して一つの政治的な物語を組み立てた、フランス絵画史でも屈指の規模をもつ作品です。ルーヴルではドゥノン翼702番展示室で、同じ部屋のアングル《グランド・オダリスク》や、隣の700番展示室にあるジェリコー《メデューズ号の筏》とあわせて見ると、19世紀初頭のフランス絵画の振れ幅がよく分かります。