灰色の羽根帽子の婦人:マネが最晩年に残したパステルの横顔

灰色の羽根帽子の婦人:マネが最晩年に残したパステルの横顔

名画
作者
エドゥアール・マネ
制作年
1882年
所蔵
ひろしま美術館
所在地
広島市中区

マネが亡くなる前年、1882年に描いたパステル画です。羽根と花を飾った帽子の女性を、横顔でやわらかくとらえています。広島市中区のひろしま美術館が所蔵し、本館のコレクション展示で公開中。油彩とは違うパステルの軽やかな線が味わえる一点です。

ひろしま美術館が所蔵するマネの《灰色の羽根帽子の婦人》は、画家が亡くなる前年、1882年のパステル画です。羽根と花で飾られた帽子の女性を横顔でとらえた小品で、油彩とは違う軽やかな筆致が味わえます。広島の中心部、中央公園のなかで出会える一点です。

《灰色の羽根帽子の婦人》とは

エドゥアール・マネ(1832–1883)が1882年に制作した、カンヴァスに描かれたパステル作品です。大きさは55.0×35.3センチ。黒い上着に水色のフリルをのぞかせた女性が、灰色がかった羽根と白い花を飾った帽子をかぶり、静かに横を向いています。モデルはマネ晩年の親しい友人メリー・ローランとされ、ウィキメディア・コモンズでも彼女の名で公開されています。マネは印象派展には一度も参加しませんでしたが、近代化するパリを舞台に、スペイン絵画や日本の浮世絵に影響を受けた革新的な作品を生み出し、「印象派の父」と呼ばれました。

1882年といえば、マネが大作《フォリー=ベルジェールのバー》を発表した年です。その一方で、体調の悪化した画家は、体に負担の少ないパステルで親しい人々の肖像を数多く手がけました。本作もその系列に連なる一点です。画布に直接引かれたパステルは、油彩のように塗り重ねて修正することができません。だからこそ線には迷いがなく、一度置いた色がそのまま作品として残ります。晩年のマネが選んだこの画材は、彼が最後まで手放さなかった「見たままの軽やかさ」とよく合っていました。

どこで見られる?

  • 所蔵先:公益財団法人ひろしま美術館
  • 所在地:広島市中区基町3-2、中央公園内
  • 展示状況:本館のコレクション展示に出ています。2026年7月11日からの「展示中の所蔵作品リスト」に本作が掲載されています
  • 観覧料:特別展「誕生70周年記念 ミッフィー展」(2026年7月11日~9月8日)の会期中は、一般2,500円、高・大学生1,000円、小・中学生500円です。この入館券でコレクション展示もあわせて見られ、単独の入館料は設定されていません。特別展のない時期のコレクション展示は、一般1,000円、大学生700円、高校生以下無料という設定の例があります
  • 開館時間:9時から17時、入館は16時30分までです。休館日は月曜日ですが、特別展の会期中は開館します

展示状況や観覧料は所蔵館の公式サイトで確認してください。

見どころ3選

  • パステルの速度:カンヴァスに直接引かれたパステルの線は、油彩よりも素早く、直接的です。頬や首もとのやわらかさは、この画材でしか出せません
  • 帽子の羽根:題名になった灰色の羽根が、ふわりと画面の上半分を占めます。硬い黒の上着との質感の差が、そのまま絵の見どころです
  • 最晩年の一点:翌1883年にマネは世を去ります。病に苦しみながら描いた小品には、パリの社交界を生きた女性への親しみが残ります

この絵が日本にある理由

ひろしま美術館は、広島銀行が創業100周年を記念して設立し、1978年11月3日に開館しました。掲げられたテーマは「愛とやすらぎのために」。原爆で壊滅した街が復興を遂げるなかで、市民が心の喜びとやすらぎを得られる場をつくろうという願いから生まれた美術館です。本館は原爆ドームに着想を得た円形のドーム、その周囲の回廊は厳島神社の建築にならった造りで、いずれも広島を象徴する世界遺産が意識されています。コレクションはフランス近代美術を柱とし、ドラクロワやミレー、クールベからマネ、モネ、ルノワール、セザンヌ、ゴッホ、ピカソまでを一望できる構成です。本作もそのフランス近代の流れのなかに置かれています。同館はもう一点、マネの《バラ色のくつ(ベルト・モリゾ)》(1872年)も所蔵していますが、こちらは2026年夏の時点で三菱一号館美術館の展覧会に貸し出されています。二点のマネがそろう時期は限られるので、公式サイトの「貸出中の作品」ページを見てから出かけると確実です。

まとめ

マネ最晩年のパステルは、大作の迫力とは違う、ささやくような美しさを持っています。広島の中心部、緑に囲まれた中央公園のなかで、フランス近代絵画の流れをたどりながら出会える一点です。ひろしま美術館は特別展の会期かどうかで入館料が変わり、コレクション展示の作品も入れ替わります。訪ねる前に公式サイトの「展示中の所蔵作品リスト」と入館料を確かめておきましょう。