モネ「ジヴェルニーの積みわら、夕日」:さいたま市が持つ、連作前夜の積みわら

モネ「ジヴェルニーの積みわら、夕日」:さいたま市が持つ、連作前夜の積みわら

名画
作者
クロード・モネ
制作年
1888〜1889年
所蔵
埼玉県立近代美術館
所在地
埼玉県さいたま市

モネの代表作として知られる《積みわら》の連作に先立つ、1888〜89年の一枚です。埼玉県立近代美術館が開設準備室時代の1981年に購入したコレクションの顔で、常設展「MOMASコレクション」で一般200円で見られます。夕日に包まれた麦わらの山が主役です。

クロード・モネの《ジヴェルニーの積みわら、夕日》は、埼玉県立近代美術館が所蔵する油彩画です。モネの代表作として知られる《積みわら》の連作に先立つ時期の作品で、夕日を浴びた麦わらの山が暖かい色でとらえられています。同館の常設展「MOMASコレクション」で公開されており、観覧料は一般200円です。

《ジヴェルニーの積みわら、夕日》とは

制作は1888年から1889年にかけて。技法は油彩、支持体はカンヴァスで、大きさは縦65センチメートル、横92センチメートルです。英語の題は「Grainstacks at Giverny; the Evening Sun」とされています。ジヴェルニーは、モネが1883年から亡くなるまで暮らしたパリ北西の村で、あの睡蓮の庭がある場所です。

描かれているのは、収穫した麦を野に積み上げた「積みわら」です。モネはこの主題を1890年から翌年にかけて集中的に描き、光と季節によって同じものがどう変わるかを追った連作を残しました。本作はその連作より前、1888年から89年にかけて描かれたもので、モネがこの何でもない農村の風景に手ごたえを感じはじめた時期の仕事にあたります。夕日という条件を選んでいる点も、後の連作を予告しているように見えます。

横長の画面のなかで、積みわらは中心から少しずらして置かれ、背景には低い丘と木立が広がります。派手な出来事は何も起きていません。それでも画面が退屈にならないのは、沈む日の光が草にも土にも積みわらの側面にも回り込み、全体を同じ暖かさで包んでいるからです。

積みわらは、収穫した麦を脱穀するまでのあいだ野に積んでおくもので、当時のジヴェルニーではごくありふれた光景でした。モネはその何でもないものを、絵の主役として扱いました。宗教画や歴史画のような立派な題材でなくても、光さえあれば絵は成立する。そう言い切ったところに、印象派という運動のいちばん大胆な部分があります。この一枚は、その考え方が固まっていく過程を見せてくれます。

どこで見られる?

  • 所蔵先:埼玉県立近代美術館(MOMASコレクションで公開)
  • 所在地:埼玉県さいたま市浦和区常盤9-30-1(北浦和公園内)
  • 展示状況・観覧料:常設展にあたる「MOMASコレクション」は年4回に分けて内容を入れ替えて行われます。観覧料は一般200円(20名以上の団体は120円)、大学生・高校生100円(団体60円)、中学生以下は無料。企画展の観覧券があれば、その会期中はMOMASコレクションもあわせて見られます。なお本作は2026年、モネ没後100年を記念してフランスのジヴェルニー印象派美術館の展覧会に貸し出され、返却後にMOMASコレクションでの展示を再開する予定と報じられました。
  • 展示状況や観覧料は所蔵館の公式サイトで確認してください。

見どころ3選

  • 夕日がつくる暖かい色:沈む日の光が画面全体を包み、麦わらにも地面にもオレンジや赤みが差しています。時間帯そのものが主題になっています。
  • 連作の一歩手前という位置:モネが積みわらの連作を本格的に始めるのは1890年からです。それより前のこの絵には、まだ一枚の風景画としての落ち着きがあります。
  • 横長の画面と余白:縦65センチに対して横92センチという横長の画面で、積みわらの周りに広い野原がとられています。主役を大きく描かないところにモネらしさがあります。

この絵が日本にある理由

この作品は、埼玉県立近代美術館がまだ開設準備室だった1981年に購入したものです。美術館が開館する前、収蔵品をゼロから集めていた段階で買われた一点であり、以来この館のコレクションの「顔」と呼ばれてきました。2026年にジヴェルニーへ貸し出された際も「里帰り」として報じられています。

1980年前後は、各地の自治体が相次いで近代美術館を構想した時期でした。埼玉が開館前に印象派の一枚を押さえたことは、これから作る美術館の性格を決める投資でもあったはずです。結果として、東京に出なくても、北浦和の駅から歩いてモネの積みわらに会えるという環境が生まれました。

まとめ

《ジヴェルニーの積みわら、夕日》は、モネが有名な連作を始める少し前に、夕日の下の積みわらを描いた1888〜89年の油彩です。埼玉県立近代美術館が開館前の1981年に購入し、いまもコレクションの中心として常設展で公開しています。一般200円という観覧料で、モネが晩年まで暮らした村の風景に向き合えるのは、なかなか贅沢な体験です。