モネ「ポール=ドモワの洞窟」:水戸で会える、荒海の島に向き合った一枚

モネ「ポール=ドモワの洞窟」:水戸で会える、荒海の島に向き合った一枚

名画
作者
クロード・モネ
制作年
1886年
所蔵
茨城県近代美術館
所在地
茨城県水戸市

睡蓮の画家として知られるモネが1886年、ブルターニュ沖の島に滞在して描いた岩と海の一枚です。茨城県水戸市の茨城県近代美術館が所蔵し、所蔵作品展のなかで展示替えをしながら公開しています。観覧料は一般360円で、地元作家の作品とあわせて見られます。

クロード・モネの《ポール=ドモワの洞窟》は、茨城県水戸市の茨城県近代美術館が所蔵する油彩画です。1886年に、フランス北西部の海と岩に正面から向き合って描かれた作品で、睡蓮の池でよく知られるモネとはずいぶん印象が違います。同館の所蔵作品展のなかで、展示替えをしながら公開されています。

《ポール=ドモワの洞窟》とは

制作年は1886年、技法は油彩で、支持体には麻布が使われています。画面の大きさは65×83センチメートル、茨城県近代美術館の登録番号はO-236です。描かれているのは、ブルターニュ地方の沖に浮かぶベリール(ベル=イル)の海岸にある、ポール=ドモワと呼ばれる場所の洞窟です。

同館の解説によれば、この絵がとらえているのは、風が少なく天気の良い日の情景です。青や緑の細かい筆致によって穏やかな海面が表され、岩肌には暖色系の筆触が置かれて、光の当たる面と影になる面が描き分けられています。荒れ狂う波ではなく、静かに凪いだ日の海が選ばれているところに、モネがこの土地で何を見ようとしていたかがうかがえます。

モネはそれまで、パリ近郊の川辺や庭、明るい花畑を主題にしてきた画家でした。その画家が、大西洋に洗われる岩だらけの海岸に腰を据え、硬い岩と揺れる水面という、まったく質感の違うものを一枚のなかに収めようとしています。柔らかい水を描く筆と、重い岩を描く筆が同じ画面で隣り合っているところが、この絵のいちばんの見どころだと言えます。

印象派というと、明るい光や華やかな都会の情景を思い浮かべる方が多いかもしれません。けれどもこの絵にあるのは、人の姿もなく、建物もない、ただの岩と水です。同じ海岸を主題に複数の作品を残していることを考えると、ひとつの場所に留まって同じものを描き続けるという、後年の連作につながる姿勢がこの時期にはすでに見てとれます。展示室では、まず離れて全体の色の印象をつかみ、それから近づいて筆の跡を追ってみてください。遠くからは静かな海に見えていた部分が、実は無数の短い筆の集まりであることに気づくはずです。

どこで見られる?

  • 所蔵先:茨城県近代美術館(所蔵作品展で公開)
  • 所在地:茨城県水戸市千波町東久保666-1
  • 展示状況・観覧料:所蔵作品展「日本の近代美術と茨城の作家たち」のなかで、会期ごとに展示替えが行われます。観覧料は所蔵作品展が一般360円、高校生270円、小中学生200円、満70歳以上180円。企画展を観覧した方は、同じ日に限り所蔵作品展も無料で見られます。開館時間は9時30分から17時(入場は16時30分まで)、休館日は月曜日(祝日の場合は翌日)と年末年始です。
  • 展示状況や観覧料は所蔵館の公式サイトで確認してください。

見どころ3選

  • 凪いだ海面の細かい筆致:青と緑を細かく重ねた筆づかいで、波の立たない穏やかな水面が表されています。近づいて見ると、色の粒がびっしり並んでいるのが分かります。
  • 暖色で描かれた岩肌:海の寒色に対して、岩には暖かい色の筆触が置かれています。光の当たる面と影の面の対比が、岩の硬さと重さを画面に出しています。
  • 洞窟という主題の選び方:入り江の岩に口を開けた洞窟をとらえた構図で、空はほとんど描かれず、水面と岩壁だけで画面が構成されています。

この絵が日本にある理由

茨城県近代美術館は、横山大観や下村観山、小川芋銭といった郷土ゆかりの作家をはじめ、国内の近現代美術を中心に収蔵している美術館です。そのコレクションのなかに、数は多くないものの西洋絵画の一群があり、同館が所蔵作品として名前を挙げているのはモネのほか、クールベ、ピサロ、ルノワールです。

日本の近代美術は、西洋絵画を手本にしながら育ってきました。その手本を実物で示せるかどうかは、近代美術館にとって小さくない問題です。西洋絵画の名品というと東京や大都市の私立美術館を思い浮かべがちですが、県立の美術館が印象派の一点を持ち、地元の作家の作品と同じ建物のなかで見せているという事実は、日本各地に西洋美術が根を下ろしてきた歴史そのものだと言えます。

まとめ

《ポール=ドモワの洞窟》は、モネが海と岩に向き合った1886年の一枚です。穏やかな海面の細かい筆致と、暖色でとらえられた岩肌の対比が見どころで、水戸の茨城県近代美術館で、所蔵作品展の一点として公開されています。観覧料は一般360円と手ごろで、地元作家の作品と行き来しながら見られるのもこの館ならではです。パリまで行かなくても、日本の県立美術館でモネの本気の風景画に出会えます。