ひまわり:7点描かれ、世界に散った連作
- 作者
- フィンセント・ファン・ゴッホ
- 制作年
- 1888-1889年
- 所蔵
- ナショナル・ギャラリー(ロンドン)ほか / SOMPO美術館(東京)
- 所在地
- イギリス・ロンドンほか
ゴッホが花瓶のひまわりを描いた油彩は全部で7点。ロンドン、アムステルダム、ミュンヘン、フィラデルフィアに加え、東京のSOMPO美術館にも1点あり、アジアで唯一実物が見られます。
ゴッホの《ひまわり》は一枚の絵ではありません。花瓶に挿したひまわりを描いた油彩は全部で7点あり、現在は世界各地に分かれて所蔵されています。そのうち1点は東京のSOMPO美術館にあり、日本にいながら実物と向き合えます。
ひまわりとは
連作は南フランスのアルルで始まりました。1888年8月に4点が描かれ、SOMPO美術館は自館の作品を1888年11月下旬〜12月上旬頃の制作としており、少なくとも1点は1889年1月ではない(ファン・ゴッホ美術館とフィラデルフィアの2点が1889年1月の再制作)ゴッホ自身は後者を「まったく同じ複製」と呼びましたが、実際には背景の色や花の数、筆致に違いがあります。
7点のうち、現在公開されているのは5点です。1点は個人蔵で長く公開されておらず、もう1点は1919年に実業家・山本顧彌太が購入したものの、1945年8月の空襲で芦屋の自邸とともに焼失しました。つまり現存6点、常時見られるのは5点、という状況です。
どこで見られる?
- ロンドン:ナショナル・ギャラリー(所蔵番号NG3863)。2026年6月6日〜10月11日はフィラデルフィア美術館に出品中で、ロンドンでは見られない。同期間はロンドンとフィラデルフィアの2点がフィラデルフィアで並んで展示されている。1924年にコートールド基金の援助で購入されました。
- アムステルダム:ファン・ゴッホ美術館。1889年1月に、上記ロンドンの作品をもとに描かれた一点です。
- ミュンヘン:ノイエ・ピナコテーク所蔵。青緑の背景に14本の一点ですが、同館は改修のため長期休館中で、収蔵品はアルテ・ピナコテークなどで公開されています。
- フィラデルフィア:フィラデルフィア美術館。1889年の制作で、背景は青緑系です。
- 東京:SOMPO美術館(新宿)。1888年制作、油彩・カンヴァス、100.5×76.5センチ。公式サイトによれば1888年11月下旬から12月上旬頃に、ロンドンの作品をもとに描かれました。1987年にコレクションに加わり、アジアで唯一《ひまわり》が見られる美術館として知られています。
- 予約:各館で方式が異なります。ナショナル・ギャラリーは常設展示が無料、SOMPO美術館は企画展の会期によって展示状況が変わるため、事前確認が欠かせません。
開館時間や入館料は所蔵館の公式サイトで確認してください。
見どころ3選
- 黄色だけで描く挑戦:ロンドンとアムステルダムの作品は、背景も花瓶も花も黄色系でまとめられています。色の対比に頼らず、明度と絵具の質感の差だけで形を立ち上げる実験です。
- 枯れゆく花を並べた点:満開の花だけでなく、花弁が落ちて種の部分が露わになった花、うつむいた花が同居しています。盛りと衰えを一つの束に収める構成です。
- 厚塗りの筆致:花芯は絵具を渦のように盛り上げ、花弁は一筆ずつ放射状に置かれています。実物では絵具が物理的に立ち上がっている様子がはっきり見えます。
描かれた背景
1888年、ゴッホはアルルの「黄色い家」でゴーガンを迎える準備をしていました。友人の到着に備えて部屋を飾るため、短期間に集中して描かれたのがこの連作です。ゴーガンは10月23日にアルルへ到着し、共同生活が始まりますが、二人の関係は同年12月に破綻します。
1889年1月の再制作は、その破綻の直後に行われました。ゴーガンがこの連作を高く評価していたこともあり、ゴッホは自分の代表作としてもう一度同じ主題に取り組みます。SOMPO美術館の一点も、この時期に近い制作とされています。花を描いた明るい絵の背後に、共同生活の高揚と挫折が重なっているわけです。
ひまわりという花の選択にも理由があります。ゴッホは黄色を、太陽と友情と希望を表す色として特別視していました。オランダ時代の暗い色調から南仏で一変した彼の色彩感覚が、最も直接的に表れているのがこの連作です。同時に、ゴッホが使ったクロムイエローの一部は経年で褐色化しやすく、制作当時の鮮やかさは失われつつあります。現在の科学調査は、その退色の進行を止める方法を探る段階に入っています。
まとめ
7点のうち5点が公開され、そのうち1点は東京のSOMPO美術館にあります。海外へ行かなくても本物に会える、数少ない世界的名画です。ロンドンの第43室と合わせて2点見れば、同じ主題への二度目の挑戦がどう変わったかを自分の目で比べられます。ただしロンドンの一点は2026年10月11日までフィラデルフィア美術館へ貸し出されています。展示状況は変動するため、訪問前に各館の公式サイトを確認してください。