睡蓮:モネが遺した、部屋ごと絵になる大装飾画

睡蓮:モネが遺した、部屋ごと絵になる大装飾画

名画
作者
クロード・モネ
制作年
1914年〜1926年ごろ(オランジュリーの大装飾画)
所蔵
オランジュリー美術館
所在地
フランス・パリ

モネの睡蓮は連作で世界各地に分蔵されていますが、代表格はパリのオランジュリー美術館にある8面の大装飾画です。二つの楕円形展示室の壁を覆い、天窓からの自然光で鑑賞できます。日本でも香川県直島の地中美術館が晩年の5点を常設展示しています。

クロード・モネの「睡蓮」は一枚の絵の題名ではなく、ジヴェルニーの自邸の池を主題に、晩年まで描き続けられた膨大な連作の総称です。その到達点が、パリのオランジュリー美術館にある8面の大装飾画。二つの楕円形の展示室の壁をぐるりと覆い、部屋そのものが作品になっています。連作の他の作品は世界各地の美術館に分蔵され、日本にも複数所蔵されています。

睡蓮とは

オランジュリーの大装飾画は、高さがいずれも1.97メートルで統一され、長さは設置場所の曲面に合わせてそれぞれ異なります。全体で総延長はおよそ100メートル、面積にして約200平方メートル。水面に浮かぶ睡蓮、垂れ下がる柳の枝、水に映る木々と雲が、途切れることなく続いていきます。地平線も岸辺も描かれず、見る者は水面の中に立たされたような感覚になります。

第一室には「緑の反映」「日没」「雲」「朝」の四面が、第二室には「木々の反映」「柳のある朝」「柳のある晴れた朝」「二本の柳」の四面が配されます。中でも「二本の柳」は全体で最大の作品で、長さは17メートルに達します。二つの楕円形の部屋はつなげると無限大の記号を描く配置で、モネ自身が建築家カミーユ・ルフェーヴルとともに設計に関わりました。天井から自然光が落ちる設計のため、時刻や天候によって画面の表情が変わります。

どこで見られる?

  • 所蔵先:オランジュリー美術館(Musée de l'Orangerie)の睡蓮の間。ほかにマルモッタン・モネ美術館、オルセー美術館など世界各地に連作が分蔵
  • 都市:フランス・パリ(チュイルリー庭園内)
  • 展示室:地上階の二つの楕円形展示室。第一室に4面、第二室に4面、計8面が自然光のもとで常設展示されています
  • 日本で見るなら:香川県直島の地中美術館が晩年の「睡蓮」5点を自然光のみで常設展示。日時指定の予約制で、オンラインでのチケット購入が必要です
  • 予約:オランジュリー美術館は公式サイトで日時指定チケットを販売しています。混雑時は入場制限がかかるため事前購入が安心です

開館時間や入館料は所蔵館の公式サイトで確認してください。

見どころ3選

  • 時間帯で変わる光:オランジュリーの展示室は天窓からの自然光で照らされます。朝と午後では画面の青や紫の見え方が変わり、同じ絵が別物のように感じられます。
  • 近づいたときの筆致:離れて見れば水面ですが、近づくと絵具の塊と激しい筆の動きが現れます。具象と抽象の境目を歩くような体験ができます。
  • 17メートルの「二本の柳」:第二室の一番奥、パノラマのように広がる最大の一面。端から端まで歩きながら見る必要があり、絵画というより空間装置に近い迫力です。

描かれた背景

モネは晩年、白内障で視力が衰えていく中でこの大装飾画に取り組みました。制作を励まし続けたのが、友人であり当時の首相でもあったジョルジュ・クレマンソーです。クレマンソーはジヴェルニーを訪ねてモネを支え、白内障の手術も勧めました。作品の国家への寄贈は1922年に取り決められ、設置場所としてチュイルリー庭園のオランジュリーが選ばれます。

しかしモネは1926年に亡くなり、8面すべてが設置された姿を見ることはありませんでした。一般公開は1927年5月17日、当初は「クロード・モネ美術館」として開館しています。壁の曲面に沿って絵を貼りめぐらせ、鑑賞者を絵の内側に置くというこの構想は、後のインスタレーション芸術を先取りしたものとも評価されています。

モネの睡蓮の連作は、生涯を通じて非常に多くの作品が制作され、現在は欧米や日本の美術館に広く分蔵されています。パリのマルモッタン・モネ美術館やオルセー美術館のほか、日本国内でも複数の館が所蔵しており、必ずしもパリまで行かなければ会えない作品ではありません。ただし、オランジュリーのように部屋全体が一続きの水面になっている例は他になく、絵の前に立つのではなく水の中に立つという体験は、この二部屋だけのものです。

まとめ

「睡蓮」を見に行くときは、どの睡蓮なのかを意識するのが大切です。部屋ごと体験したいならオランジュリー美術館、日本国内で自然光のもとの晩年作に会いたいなら直島の地中美術館という選択になります。地中美術館は完全予約制ですので、旅程が決まったら早めにチケットを確保してください。